この記事をまとめると
■製造から時間が経過したタイヤに対して「使っても大丈夫なのか?」という疑問がある
■大手タイヤメーカーやタイヤ公正取引協議会では適正保管された新品タイヤであれば、2〜3年前に製造されたものでも「性能は同等」としている
■タイヤの賞味期限は、環境条件、保管条件、使用方法によるため明確な結論は出せない
適正保管されていればほとんど性能低下はない
冬本番を迎える前に必要な人はとっくに履き替えているだろうが、これからウインタースポーツに出かけるために履き替えようと思っている人に向けて、年が明けてからもオークションサイトをのぞいてみると、何シーズンか前に製造されたが「未使用」であることを強調したスタッドレスタイヤの出品がいくつも見られる。
また、カー用品店やタイヤショップでは、何年か前に製造された新品タイヤが価格を下げて売られていたりする。実際、暖冬でスタッドレスタイヤの需要が伸びない年には、在庫をなくすため翌シーズン向けの新規生産を計画的に減らすこともあるという。
そんな製造から時間が経過したタイヤに対して、誰しも使っても大丈夫なのか? という不安を感じるに違いない。性質の異なる複数のゴムを配合して作られるタイヤというのは、たとえまったく走らなくても時間が経過すれば、ゴムが硬化したりヒビ割れたりして性能が低下して当然……と考えられていた。
これについて、ある大手タイヤメーカーは、2シーズン前のものでも問題ないと公式にアナウンスしている。適正保管された新品タイヤであれば、3年前に製造されたものでも「氷上性能は同等」という。
同じくタイヤ公正取引協議会も、適正な環境に保管されたタイヤであれば、2シーズン前のタイヤでも新品と同等の性能を保つことが確認されたので、そのことを積極的に訴求していきたいとしている。
ここでいう「適正」な保管とは、直射日光、雨、油類、ストーブのような熱源などを避けて温度変化を小さくして保管することをいう。
2020-21年に製造された未使用タイヤを2023-24年シーズンに使っても、タイヤとしての機能に違いはないと認識して安心して使ってかまわないということだ。さらに、それを使い始めてからの性能変化度合いも新品と同等なので、古いタイヤだから早めに換えなければいけないということもないという。
実際に筆者も、ある大手タイヤメーカーのテストコースで、新品と製造から4年が経過した状況を模したタイヤで氷上ブレーキ性能を比較したことがある。結果は、わずかに4年落ちのほうが制動距離は長かったものの、ごく小さな差で体感的にもほとんど違いはわからなかった。ゴムを触ってみても、柔らかさに違いを感じられなかった。技術の進化で昔よりも硬化しにくいゴムが開発されたことが効いているそうだ。