この記事をまとめると
■スバルの「シンメトリカルAWD」の凄さを解説
■左右対称の4輪駆動システムで信頼感のある「素性の良い4輪駆動」になる
■EVでも威力を発揮する駆動方式で今後のさらなる進化が期待される
高さ方向に余裕がある水平対向エンジンならではの仕組み
SUBARUの4輪駆動はシンメトリカルAWD(エー・ダブリュー・ディー)と呼ばれ、左右対称の4輪駆動システムであることが利点として謳われている。同様の考えは、ドイツのアウディが1980年に誕生させたクワトロでも、採用された。
SUBARUは、スバル360のあとスバル1000という登録車の4ドアセダンを発売した。これは、水平対向4気筒エンジンを縦置きに搭載する前輪駆動(FF)車で、水平対向エンジンであることにより高さにゆとりがあるのを活用し、エンジンの下にデファレンシャルを設け、左右の前輪に駆動力を伝えた。最大の利点は、トルクステアをなくせることだ。
トルクステアとは、デファレンシャルから左右の車輪まで駆動力を伝えるシャフトの長さが違っていたり、ユニバーサルジョイントに角度が強くつき過ぎていたりすることで生じる。左右の車輪に伝わる駆動に若干の差が出ることで、ハンドルを切ってアクセルを踏んだ際などに、想定と異なる曲がり方をする現象だ。一般に、「ハンドルを取られる」などと表現され、狙った進路へ曲がれない状況になる。
トルクステアが起こる代表的な原因は、横置きエンジンの場合、出力の取り出しが車体の左右どちらかへ偏るため、そこにデファレンシャルが設けられれば、当然、左右の車輪までの駆動シャフトの長さが違ってくる。長短シャフトの差が、回転力の伝達の仕方の差となって車輪に影響を及ぼす。それによってタイヤの回転が左右で違ってしまい、ハンドルを取られるというわけだ。
今日では、ABSやトラクションコントロールといった電子制御が普及し、個別の車輪にブレーキをかけることができるようになったため、トルクステアが出そうになると片輪にブレーキをかけ、左右の回転を調整できるようになり、横置きエンジンのFF車でもトルクステアを感じることは稀になった。