いまの価値に換算すると「軽自動車」開発の苦労がわかる! 誰もが乗れるクルマにまで成長したKカーに敬礼!! (2/2ページ)

実用性を追求したクルマを安価に普及する時代に!

■スズキ初代ワゴンR(1993年)

*価格:108万3000円(RX)
*現在の価値に換算すると:約131万円

 1950年代のスバル360は軽自動車の先駆けで、その先進性により、このカテゴリーを活性化させて国民車の地位を確立させた。1970年代の初代アルトは、それまで高価だった軽自動車の価格を今と同様の水準まで引き下げて、さらなる普及を促した。

 そして1990年代の初代ワゴンRは、全高が1600mmを超える背の高いボディにより、快適に4名で乗車できる居住空間を備える。軽自動車の「安価な代わりに我慢して使う2名以内で短距離を移動するクルマ」という認識を払拭させた。

 初代ワゴンRが備える後席の背もたれを前側に倒すと座面も連動して下がり、広い荷室が得られるシートアレンジ、助手席の下側に装着された大型シートアンダーボックスなどは、現行型にも受け継がれている。

 売れ筋グレードだったRXの価格を現在の価値に換算すると約131万円だから、現行型でもっとも安価なFXの129万6900円に近い。ワゴンRはアルトと同様、初代モデルの買い得度を保ちながら、フルモデルチェンジによって安全面を中心に各種の機能を充実させてきた。

■ホンダ初代N-BOX(2011年)

*価格:134万円(G・Lパッケージ)
*現在の価値に換算すると:約150万円

 1990年代に初代ワゴンRが発売され、その後にダイハツ・ムーヴを始めとして、背の高い軽自動車が続々と登場した。2003年には全高が1700mmを超える初代タントが発売されて注目を集め、2代目以降はスライドドアを装着するミニバン風のスタイルに変わってさらに人気を一層高めた。スズキ・パレット/スペーシアも加わり、全高が1700mmを超えてスライドドアを装着するスーパーハイトワゴンが人気のカテゴリーになった。

 そして2010年代に入ると、初代N-BOXが発売され、2代目以降は安定的に日本国内の販売1位になった。軽自動車全体の販売比率も約40%に達する。

 以上のようにスバル360以降の軽自動車は、さまざまな変遷を遂げながら成長を重ねて、遂に国内販売1位を用意する最多販売カテゴリーになった。その理由は、軽自動車が日本のユーザーの生活を常に見据えて開発されていることだ。その一方で普通車は、肥大化と高価格化に突っ走り、軽自動車とは逆に支持を低下させてしまった。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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