この記事をまとめると
■昔から現在に至る軽自動車の歴史を振り返ると時代背景が見えてくる
■国民的な人気を集めた車種を挙げながらその理由を解説
■軽自動車はまさに国民の声を聞きながら進化を続けてきた
軽自動車の進化と価格の推移がスゴイ!
もはや死語になった印象もあるが、クルマが高額商品だった時代には「国民車」という言葉があった。その歴史を軽自動車を軸に振り返ると、クルマが身近な存在になっていく過程が明確にわかる。
■スバル360(1958年発売)
*価格:42万5000円
*現在の価値に換算すると:約670万円
スバル360は1958年に発売された。当時の軽自動車だから、全長は2990mm、全幅は1300mmと小さい。しかも斬新なモノコックボディにより、車両重量は385kgと軽い。当時の軽自動車は500〜600kgだったから、スバル360は70%前後だ。
その一方で丸みのあるボディは空間効率が優れ、4名乗車を可能にした。ボディが軽いために、当時の軽自動車では走行性能も優秀であった。スバル360は、クルマが急速に進歩した1960年代を通じて、フルモデルチェンジを行わずに1970年まで生産された。
1958年に発売されたときの価格は42万5000円で(開発段階では40万円以下に抑えたかったが無理だった)、大卒初任給をベースに今の価値に換算すると670万円に達する。当時のスバル360は、今ならアルファード&ヴェルファイアハイブリッドのような価格設定であった。
ところが1969年式スバル360スタンダードの価格は31万9000円まで下がり、今の価値に換算すると225万円だ。所得や物価の上昇と、車両価格の値下げにより、スバル360の実質価格は大幅に下がって10年少々で約3分の1になっていた。
■スズキ初代アルト(1979年発売)
*価格:47万円
*現在の価値に換算すると:約98万円
スバル360が発売された1950年代に比べると、1970年代はクルマが大幅に身近な存在になった。そこでスバル360の約20年後に登場した国民車的な軽自動車がスズキ初代アルトだ。2人乗りの価格は47万円(開発目標は45万円だった)で、現在の価値に換算すると約98万円になる。
この価値は、現行アルトでもっとも安価なAの106万4800円に近い。過去のアルトの価格推移を振り返ると、ベーシックグレードは、常に「1979年の47万円」に近い価値で発展してきた。
しかし中身は大幅に変わった。45年前に発売された47万円の初代アルトは、前述のとおり後席を装着しない2人乗りで、今日的な安全装備は一切装着されていない。パワーステアリング、エアコン、時計なども非装着だ。左側の鍵穴まで省いた。
それが現行アルトAは、4輪ABS、横滑り防止装置、衝突被害軽減ブレーキ、運転席/助手席/サイド/カーテンエアバッグなども標準装着する。いつの時代も「1979年の47万円」の価値を保つアルトの装備内容を振り返ると、時間の経過に伴って充実度を高め、買い得度を強めてきた経緯がわかる。