この不便さはワザとなのか? 快適さを捨てた苦行の先に「圧倒的な快楽」が感じられるクルマ5選 (2/2ページ)

まるでスーパーカーのようなディテールを持った軽自動車

 3台目は、軽自動車なのにミドシップでガルウイングのドアという、スーパーカーがそのままぎゅぎゅっと小さくなったような、マツダ・オートザムAZ-1。1989年の東京モーターショーで参考出品されたマイクロクーペで、ほぼそのまま市販化されたモデルです。

 2シーターで、シートそのものはゆったりとしたスペースとなっていますが、後ろにはエンジンが収まっているため、荷室がありません。シートの後ろに荷物が置けるくらいのスペースはありますが、実用性という面ではやはり昨今のスーパーハイトワゴンのようにはいかないようです。

 ただ、660ccのターボエンジンとはいえ車重が770kgほどと軽いので、体感加速やコーナリングはレーシングカート感覚。この楽しさはなかなか他では味わえないものです。また、駐車場で乗り降りする際に、良くも悪くもすっごく目立つというのも、AZ-1ならではですね。

 4台目は、そのAZ-1と同じような時期に登場したホンダ・ビートの後継モデルとして蘇った、S660。残念ながら2021年で生産終了となってしまいましたが、若き開発者が企画したこともあり、多くの若者にも人気を博したモデルです。

 2シーター、ミッドシップ、ロールトップとなったS660は、乗り心地や剛性感、風の巻き込みなどもビートに比べると格段に進化していました。ただ、やはり宿命として軽自動車サイズで出す以上、収納スペースはほとんど確保できず。ボンネット下にある収納ボックスには、取り外したロールトップすら入らず、大根1本くらいが関の山という状態です。

「助手席がついたバイク」だと思って乗れば快適です、なんてオーナーの声もあるほどで、ミニマリストかひとり乗りがほとんどの人なら不便は感じないかもしれません。それでも、ホンダならではのパワフルなターボをミッドシップに置いた走りは、頭のすぐ後ろから聴こえてくるサウンドと相まって、とても楽しいもの。ハマる人がいるのも納得です。

 5台目は、4人乗りだと思って購入したら、後ろの席がほとんど使えない! というクルマはたまにあるものですが、その中でもほんとにオマケ程度の後席となっているのが、トヨタiQ GRMNスーパーチャージャー。全長3mを切るマイクロシティコミューターとして2008年に登場したiQに、1.3リッタースーパーチャージャー付きエンジンを搭載し、6速MTとなっている希少なモデルです。

 iQは当時欧州で爆発的に普及し始めていた、smartに対抗するモデルとして注目を集めました。チョロQみたいなボディは大きなドアがふたつ。後席は、助手席側ならまだなんとか大人も座れるのですが、運転席側は足の置き場所が困るくらいタイトで、子どもならなんとかなるかも? というくらい。

 でも、後席に座ってしまうと荷物のスペースはほとんどなくなります。後席のヘッドレストを取り外し、5:5分割で前に倒すとフラットな荷物スペースになるので、1〜2人乗りとして工夫して使えば、実用性もクリアするかもしれません。それでも、走り出せば他では味わえない楽しさにノックアウトさせられるという、魅力的な1台です。

 ということで、ちょっとくらいダメなところがあるからこそ、ひとつの魅力がより際立つという意見もある、面白いクルマたち。これからも、こうしたクルマがまた出てくることを願います。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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