オリジナルにこだわるフルレストアは時間とお金に余裕が必要
日本でのフルレストアでは、ナンバーマッチングはまださほど重要視されていないようだが、実際にその作業を始めるには、クルマのコンディションをもう一度きちんと見極めたほうが良い場合も多い。
たとえばボディのコンディションはどうか。見た目にも板金の必要な部分が数多くあり、塗装もかなりの面積で剥げ落ち、さらには錆まで発生しているといった状態では、このままそのクルマに乗り続けたのではコンディションは悪くはなっても良くなることはない。
思い切って板金と再塗装(オールペイント)という選択をすることになるのだが、ここで注意しなければならないのは、クルマの塗料は一度それを剥離すると、ベースになっているスチールの耐久性は確実に落ちること。実際の仕上がりも現代の新車のようにピカピカになってしまうから、旧車の雰囲気はどうしてもそれを正確に再現するのは難しいというのが現実ともいえる。
だからこそ旧車ファンの間では「未再生原型車」ともよばれる、新車からレストアの手を加えていないモデルが人気なのだ。
エンジンやシャシーをはじめとするメカニカルなパーツも、すでに年式によってはそれを入手することが難しくなりつつある。レストアを始めようというのなら(機械的なパートはオーバーホールと呼ぶのが一般的だが)、そのためのパーツ探しにもかなりの手間が必要になることを覚悟しておきたい。
トヨタ2000GTやフェアレディZ 432Rに純正装着されていたマグネシウム製ホイールなどはその典型的な例。これは極端な例だが、あくまでもオリジナルにこだわるフルレストアに挑むのならば、時間とお金には相当な余裕が必要になると覚悟したい。
フルレストアの世界には、アメリカ流とイギリス流のふたつの系統があるという。前者は使用されるパーツのすべてに純正の新品を使用した、まさに現代に復活した新車のようなモデル。後者はフルレストアの作業を完了しても、どこかにそれまでの時間の流れを表す痕跡を、意識的に残すモデルだ。
はたして日本のレストアはどちらの方向へ進んでいくのだろうか。旧車ブームの到来が見え隠れするなか、それはとても興味深い疑問である。