エンジンは一気に消滅……とはならなそう! 各国の自動車メーカーは内燃機関の新たな可能性を探り始めていた

この記事をまとめると

■一気に進むと思われていたEVシフトに最近は変化が見え始めている

■メルセデス・ベンツやトヨタなどは「エンジン車開発継続」の姿勢を打ち出している

■市場環境の変化に応じてエンジン車の未来も変わっていくことになる

エンジン車の行方はこれからの市場環境次第

 世の中が一気にEVシフトする。そのため、ガソリンやディーゼルを使う内燃機関車はハイブリッド車も含めて今後、淘汰されていくかもしれない。ここ数年話題となってきたそんな自動車産業界の流れに最近、変化が見え始めている。どうしてそんなことになってきているのだろうか?

 まずは、2023年後半から2024年にかけて、「エンジン車存続」という意思を示している自動車メーカーの動きを見てみよう。

 たとえば、ドイツのメルセデス・ベンツは「2020年代末には新車はすべてEV化する」としていたが、今後は市場動向を見据えながらエンジン車を含めて柔軟に対応する姿勢を示している。そもそも同社のEVシフトは「市場環境が整えば」という枕詞があり、事業に対する柔軟性があったため、最近示された事業戦略についても、けっして事業方針の転換とは言えないだろう。

 直近では、「モリゾウ」ことトヨタの豊田章男会長が、東京オートサロン2024で「エンジン開発の新規プロジェクト」をトヨタ社内に立ち上げたことを明らかにした。新車はもとよりアフターマーケットでエンジン開発に携わる人たちとともに、エンジンの重要性を改めて考えようというのだ。

 トヨタをはじめとする日本自動車工業会では、カーボンニュートラルに対して「敵は炭素」というメッセージを発信し続けている。「カーボンニュートラル=EV」ではなく、ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、EV、燃料電池車、水素燃料車、そしてエンジン車のさらなる改良や合成燃料の使用など、さまざまな方法を国や地域の社会状況に応じて組み合わせていくという考え方だ。

 一方、グローバルでのEVシフトという流れが強まった背景には、2010年代中盤から欧州での環境に対する規制の議論が大きく関わっている。それが、欧州連合による欧州グリーンディール政策という形となり、EV導入に対する規制強化が進んだ。その影響が、アメリカのバイデン政権にも及び、アメリカでもEV強化に及んだ形だ。

 ところが、2022年から2023年にかけて、欧米では「いわゆるアーリーアダプター向けのEV需要が一巡した」という見方や、ドイツなどでのEV購入補助金の見直しなどにより、EV販売が頭打ちになった。

 そのため、欧州連合のEV関連規制のなかで、合成燃料を使うエンジン車も含めるといった変更が施されるに至った。さらに、アメリカでは2024年11月の大統領選挙の結果次第でEV関連政策が大幅に変更される可能性も否定できない状況にある。

 このような欧米市場の動向を踏まえて、自動車メーカー各社はエンジン開発の継続や新規開発の強化という判断を下したと言えるだろう。

 市場環境の変化に応じて、エンジン車の未来も変わってくるということだ。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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