この記事をまとめると
■冬はトラックの車輪脱落事故の発生件数が多い
■令和3年度は11月から2月の間に全体の64%を占める脱落事故が発生している
■トラックの脱落事故が冬に多い理由について解説する
スタッドレスタイヤへの履き替え作業に原因がある
タイヤ脱落事故は年間を通じて起こっているが、とくに冬季に多く発生している。これはトラックだけでなく乗用車でも共通のようだが、ここは危険性が非常に高い大型トラックに限って、話を進めていこう。
タイヤ脱落事故の発生件数を令和3年度だけで見ると、令和3年11月から令和4年2月の間だけで、全体の64%を占めるといった具合で、この傾向は過去5年間でみても変わらない。
スタッドレスタイヤ専用のホイールがあり、それが緩みやすいという構造上の問題ではない。環境の違いがタイヤ脱落事故を誘発しているのである。やはり冬タイヤに「履き替えた際の作業」が原因だった場合が多いようだ。
スタッドレスに履き替えるという作業は、タイヤ販売店などで行う場合、作業が集中する。そのため、忙しさのあまり、どうしても作業ミスや手抜き作業となりやすい状況となる。本来はネジ部やハブ面、ホイールの接合面を清掃し、給油してネジ本来のスムースな回転とハブ面の密着度を高めてからホイールを取り付けなければならない。しかし、時間に追われてこれらの作業を省略してしまうと、走行中の振動や衝撃によって密着面が削られていき、やがて隙間が生じてネジが緩んでしまうこともあるのだ。
そして、タイヤ交換から100km程度走行したあたりで、再度規定トルクでしっかりとホイールナットが締まっているか確認の作業をするのだが、忙しさのあまりにこれを先送りしてしまっているケースもあるようだ。
それに増し締めばかりしていると、締め過ぎでホイールボルトを折ってしまうことにもつながるので、キチンとしたトルク管理は重要だ。インパクトレンチではなく、トルクレンチを使うのが本来の使い方なのだが、作業効率を考えてインパクトレンチだけで済ませてしまうケースもあるようだ。
インパクトレンチによるタイヤ交換時の締め過ぎでも、ホイールボルト折損につながることもある。最近はスタッドレスタイヤを1年中履いて、春からは溝が減って夏タイヤ代わりに履き続けてすり減らし、また冬前に新品のスタッドレスに履き替えるという使い方をしている運輸業者も増えている。これでもタイヤ交換の時期はほとんど同じなので、やはりタイヤ脱落事故が起こる時期は変わらない。
走行距離や走行状況にもよるが、ホイールボルトやナットは消耗品なので一定期間使用したら新品に交換することも、タイヤ脱落を防止する対策のひとつだ。こうした整備のコストを荷主が受け入れてくれないと、運輸業者は車両整備にお金をかけにくくなる。
安全のため、ドライバー確保のためにも適正な運賃を払って、物流を健全な状態で維持していく。これは運輸業だけでなく、幅広く荷主の業界でも周知していくべきだろう。
物流の「2024年問題」と同様に、これまで先送りにしてきた問題を解決しなければ、日本の経済にも徐々にダメージを与えることになりかねない。