超重大事故にも繋がる「トラックの脱輪」は20年で1188件も発生! 規定トルクで締めているのに「ホイールナット」の緩みが発生するワケ

この記事をまとめると

■トラックのタイヤ脱輪事故は約20年間で1188件起こっている

■過酷な状況で使われていることも脱落事故を起こす要因の1つ

■定期的な点検とホイールボルトとナットの交換が必要だ

トラックのタイヤ脱輪事故は約20年間で1188件

 トラックのタイヤ脱輪事故は、平成14年4月から令和4年3月までの約20年間で1188件起こっている。単にホイールが外れてしまっただけならまだいいが、実際には外れたホイールがほかの車両と衝突したり、ホイールが脱落した車両が不安定になって事故を起こせば、被害者が発生してしまうこともありうる。

 もちろん、定期的な点検整備により、ホイールナットの緩み(運輸会社によっては毎日運行前に行なっている)がないか確認していれば、このような事故はまず起こらない。だが、トラックのタイヤホイールは乗用車とは比べ物にならないほど、過酷な状況で使われていることも、脱落事故を起こす要因のひとつだ。

 読者のなかにはホイールナットが緩んでナットが外れてしまって、ホイールが脱落してしまう、というイメージを持っている人も多いのではないだろうか。しかし、実際にはホイール脱落のメカニズムは異なる。

トラックのタイヤ交換イメージ

  

 まずネジ部が錆びついていることで、規定のトルクでしっかりと締め込まれていないナットがあれば、それが緩みの原因になる。ホイールとハブが密着していないと、ホイールボルトがホイールを支えることになり走行中、ボルトには路面の凹凸などにより衝撃が与え続けられる。

 その結果、ボルトが折れてホイールが脱落してしまうのである。こうならないためには、ホイールボルトとナットのネジ部やハブ面、ホイールの接合面はキレイな状態であることが必要だ。錆びて表面の凹凸がひどければ、完全に密着することはできないから、走行中の衝撃で擦れ合って凹凸が削れ、隙間が開いてしまう(つまりネジが緩む)こともありうる。

 本来、ネジ部分は適切な給油をして、錆を防止して適正な締め付けトルクでネジを締め付けられるようにするものだ。しかし、インパクトレンチによる締め緩め作業が一般的になった現在、作業をスピーディにするために潤滑油などを使わずに締め込んでしまうケースもあるようだ。

 潤滑油を使うとネジが緩んでしまうのでは、と思う方もいるだろうが、実際は逆だ。ネジの摩擦抵抗が大きければ締め付けトルクが正しくてもネジを十分に締め付けられなくなる。

トラックのナットをトルクレンチで締めるイメージ

  

 弛まないネジに用いる浸透潤滑剤などは、使用時には強力な浸透力と潤滑性でネジを緩めるのに役立ってくれるが、しばらくすると揮発してほとんど残らなくなる。だからこれによってネジが緩む、なんてことは起こりにくい。

 そして、ホイールを脱着したら、作業時に締め付けトルクをチェックするだけでなく、100kmくらい走行したら、再度緩みがないか確認作業をするものなのだ。しかし、忙しいトラックドライバーは、ついついこうした作業を先送りしてしまうこともある。こうしたことがナットの緩みを招いて、ホイール脱落事故を起こしてしまうのだ。

 ハードに使われるトラックこそ、定期的な点検とホイールボルトとナットの交換をするべきなのだ。


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