トラックと乗用車を同じ販売店で売ることは難しい
このような事態に陥ったのは、メーカー系特約店中心の販売手法が裏目に出たことによるものといえよう。自動車販売の要になるのはメーカー系特約店であるのディーラーだが、彼らは必ずしも系列メーカーの資本が入っているわけではない。基本的には代理店であり、経営が独立しているのである。いいかえれば、利益を確保しなければ経営が成り立たないということだ。
この場合、トヨタディーゼル店にとって主力商品である大型トラックが販売不振になったということだから、たちどころに経営が成り立たなくなるのは自明の理なのである。そこで、苦肉の策としてカローラやパブリカの販売をさせたのであろうが、販売店にしてみれば、そちらのほうが売りやすいし収益が得られるとなれば、主力商品が入れ替わるのは自然なことだ。
マーケティングの観点からしても、乗用車とトラックは似て非なるものといえる。ユーザーの利用目的が違うのだから、当然のことながら購買プロセスも異なってくる。同じ販売店で売るというのは、無理があるといえよう。2005年に人気車種のセルシオをレクサスに変え、従来のトヨタ販売店と分離して成功したことが何よりの証だ。
商品を売るにはユーザーの納得性が必要であり、そのためにはブランディングを行わなければならない。トヨタ自動車は、大型トラックの販売を通じてそれを学んだ。現在は、傘下の日野自動車がその分野のブランディングを担い、ユーザーから支持の高い製品を世に送り出しているのである。