3代目グリフィス初回分の500台が6年前に予約完売……だけど納車は1台もされず! イギリスの名ブランド「TVR」って一体全体どうなってる? (2/2ページ)

3代目グリフィスの納車が始まることを切に願う

 そして、3代目は新たなTVRオーナー、レス・エドガーと、エネルギー市場で巨万の富を築いたダニエル・レイトンによって企画され、2017年にグッドウッドやアールズコートといったいかにも英国らしい会場でお披露目されました。

 また、フォーミュラEとのタイアップも行われ、モナコのグランプリコースでデモ走行したのをご記憶の方もいらっしゃるかと。

 ロングノーズでショートオーバーハングの典型的プロポーションですが、これはかの有名なゴードン・マーレーの事務所に設計・デザインが委ねられたとのこと(どうやら、マーレー本人の介入はごくわずかという噂です)。搭載エンジンは再びアメリカ製で、フォードの5リッターV8、500馬力とカタログに記載されています。ここに、これまたオールドスクールな6速MTが採用され、0-60mphは4秒未満、最高速322km/hという「目標値」が掲げられました。

 注目すべきはお値段で、予約開始時で約1500万円と時世を鑑みればわりかしリーズナブルだったかと。

 とはいえ、3代目グリフィスはTVRの伝統どおりABSやトラクションコントロール、さらにはパワステまで省いたスパルタンな仕様。いいかえれば、サポートデバイスのぶんだけコストが下がっているわけです。むろん、市場は好意的にとらえ、初期の生産分500台はあっという間に予約で売りつくされたとのこと。

 また、2017年の発表時にはEV仕様も同時に発表されていますが、これはダニエル・レイトンが所有するリチウムイオンバッテリーの会社が絡んでくることは想像に難くありません。マーレーの事務所が提案したコンストラクション「iSTREAM」が可能にした同系統シャシーの使い分けが注目されています。ちなみに、「iSTREAM」はヤマハでも導入してるそうですから、うまくいきそうな気がしないでもありません。

 ですが、3代目グリフィスは生産の見通しが立っていないというのが現状です。イギリスのウェールズ(この地方はゴリゴリの英国人気質で知られています)で工場用地を手に入れたものの、工場が建つでもなく、昨年度はTVRから人手に渡っています。

 また、ウェールズ政府がTVRの株式を3%獲得というニュースも現状ではうやむや。経営陣とのいざこざが原因とされていますが、真相は詳らかにされていません。公式サイトやSNSをチェックしてみても、ここ最近の更新はなく、筆者が予約申し込みをしていたとしたら、「こりゃ、ないな」とキャンセルボタンを押すはずです。

 もっとも、TVRは前述のとおり波乱万丈な会社ですから、どこかで起死回生の逆転ホームランを放つことも期待できるでしょう。また、グリフィスという輝かしい車名にしても、時代のあだ花として捨て去るにはあまりにももったいない。ぜひ、新たな雄姿を公道で見せてほしいと願っているのは、決してイギリス人だけではないのですから。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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