まるで絵本の中のクルマ! 欧米の救急車が超個性的だった (2/2ページ)

往年の古き良き時代を思わせる欧・米2台の救急車

メルセデス・ベンツ170SV

 第二次世界大戦から後のメルセデス・ベンツは、ご存じ「最善か、無か」のモットーを掲げ始めましたので、乗用・商用を問わず、そりゃもう完成度の高いモデルばっかり。W136シリーズ170は、当初リムジーネ、つまり乗用サルーンとして開発されて人々のアシとなり、次いでkasten liefenwagen(バン)とkombiwagen(エステート)といった商用バリエーションが広がりました。

 こちらの救急車に仕立てられたのは1954年の170で、特殊用途むけのfahrgestelle(ベアシャシー)を用いたKrankenwagen-Lueg-Motor(自動車救急車)でした。

 45馬力、1767cc直列4気筒エンジン、4速マニュアルギヤボックス、4輪独立懸架サスペンション、4輪油圧ドラムブレーキと、当時としては最上級のスペックをもたされています。

 運転席後部には仕切り窓があり、後部コンパートメントには患者用トイレとアテンダント用の折りたたみ式シートを装備。また、リヤエンドにはヒンジ式カーゴドアのほか、助手席側にもサイドドアを設けるなど、現代のユーティリティとほぼ同じレベルでしょう。

 もっとも、押し出しの強いグリルや、地味なグレイのボディカラーなど、赤十字マークがなければ霊柩車に見紛うようなスタイル。威厳というか、存在感の高さはさすがメルセデスと唸らずにはいられません。

シボレー・ベルエア・パネルバン

 ご紹介したなかで、もっとも乗りたくなるのがベルエアのパネルバンではないでしょうか。とにかく1950年代の雰囲気が醸す雰囲気はヨーロッパのメイクスとはまったく違ったもの。というのも、1953年のベルエアは初めて湾曲したフロントウィンドウを導入しているため、独特のメッキグリルとあいまって、牧歌的というか穏やかなマスクになっているからではないでしょうか。

 3.5リッター直6エンジン、コラムの3速マニュアルシフト、そしてシボレーお得意のニーアクションサスペンションなど、商用車としては十分なスペック、そしてなにより丈夫さがアメリカ人から大人気!

 救急車へのトリミングは標準的で、サイレン、回転灯、そしてストレッチャーを積んでもアシスタントが乗れるようにオフセットされた補助シートくらいでしょうか。

 ただし、こちらのサンプルは地元ボランティアで構成される消防団が所有者だったとのことで、パレードラン対応装備もなされています。つまり、トロトロゆっくり走る際、オーバーヒート防止のために冷却ファンスイッチが追加されているのです。

 なお、オークションでの落札価格は2万ドル弱(およそ300万円弱)と、なかなかにリーズナブル。サイレンを鳴らしての走行は難しいでしょうが、それこそ街なかをゆったり流してみたくなる救急車ではないでしょうか。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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