タクシーもトラックもバスも運転士不足で人の奪い合い! なり手を増やす鍵は「精神的な負担の軽減」にある (2/2ページ)

利用者とのトラブルへの対策が進むバス業界

 しかし、このままでは地域の高齢化及び人口減少はさらに進み、バス事業者は都市部、地方部に関係なく今後はより慢性的で深刻な働き手不足に陥ることはほぼ間違いない。

「自動運転バスが問題解決する」とされているが、業界内ではそれはかなり先のことになるというのが定説である。比較的導入しやすく、ニーズも高い過疎地域の路線から導入されることになるだろうが、全国どの街に行っても自動運転バスが当たり前のように走っている光景を見るには、まだまだ時間がかかりそうである。

 さらに、バスを運転するのに必要な「第二種運転免許」の受験資格が21歳から(普通1種免許保有歴3年以上)から19歳(普通免許保有1年以上かつ特別な技能講習をうける必要あり)に引き下げられてからは、地元の高校を卒業してバス運転士として地元バス事業者へ就職する若者も少ないながら出てきており、メディアでもたびたび報じられることがある。

 ただし、タクシーやバス運転士になろうとするとき、「事故」という大きなリスクが頭をよぎる。そのリスクを最大限に抑え込むためにも、たとえばトヨタJPNタクシーでは予防安全デバイスとなる「トヨタセーフティセンス」が標準装備されている。貸切(観光)バスでは自動ブレーキなどの標準装備が進むが、一般路線バスではEDSS(ドライバー異常時対応システム/異常を感じたら運転士または乗客がボタンを押すとバスが自動的に停車するシステム)が標準装備されるぐらいとなっている。

 そのため、現状では広く後付け安全運転支援デバイスの装着など、リスク低減のためのさまざまなデバイスの導入も進んでいる。利用者とのトラブル対策では車内カメラの設置はいまや当たり前となっており、このような乗務中の精神的負荷低減への業界をあげての積極的な取り組みが、IターンやUターンを希望する異業種からの転職者や高校を卒業した新卒者採用を、少しずつではあるが増やしているといってもいいだろう。

 バスやタクシーの求人では、いままでは二種免許取得のための養成費負担や、就業支度金、実際乗務してからの歩合(タクシー)など、「お金の話」がメインとなりがちであった。ただ、とくにバスについては、前述したような乗務中の精神的負荷低減への取り組みを強調する事業者も増えてきており、そこを重視して就職先を選ぶ人も増えてきている(家族を安心させるためという側面が大きいようだ)。

 地方事業者が都市部で地元自治体と組んで、バス運転士として地元で働くことによる魅力というものをさらに強調すれば、働き手不足のスピードを鈍らせるぐらいの効果は十分に期待できるかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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趣味
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