ジャパンモビリティショーは成功したが欧米の「オートショー」は衰退気味! 如何ともしがたいメーカーの推しと消費者の推しのズレ (2/2ページ)

会場での主役はNEV! しかし現実はICE

 一方で、アジアなど新興国のオートショーは、会場内での新車販売を積極的に行っている。そのため各メーカーブースにはセールスマンが多く配置され、各セールスマンが担当顧客を積極的に会場に呼び込むこともあり、来場者も多くにぎやかなものとなっている。そしてショーのホームページには、開催期間中のブランド別販売台数が公表されることもある。

 このようなショーの性格が新興国と日本や欧米で異なることに加え、NEVの扱い方で苦慮している様子もうかがえる。たいていのショーでは正式開幕に先立ち、メディアの取材のためにメディア関係者しか会場に入ることのできない「プレスデー」のようなものを設定するのだが、そのようなプレスデーではいまどきなら主役は完全にNEVとなる。

 しかし、いくらNEVが世界的に注目されているとはいえ、まだまだICE車の販売がメインとなる地域ばかりなので、そのまま一般公開日を迎えると一般来場者としては違和感を覚える展示内容になってしまう。当然プレスデーとは異なり、一般公開日にはICE車の展示を増やすなど、手間が増えていることなどもあり、時間とお金がかかるわりにはメリットが薄いとして、欧米では出展を辞退するブランドも相次いでいる。

 欧州のショーではとくにNEVに偏ったショー内容になるケースが多く、HEV(ハイブリッド車)を得意とする日系ブランドなどは出展メリットが薄いと判断しているのか、最近では出展しないブランドも目立っている。

 つまり、自動車業界の最新トレンドはNEVなのだが、実際の販売現場ではHEVが注目されている。まだまだICE車が存在感を示しているので、その辺りの乖離状況がオートショーの魅力を減退させているように見える。

 政治レベルではどこでも「ゼロエミッション」とか、「カーボンニュートラル」などを声高に叫んでいるので、欧米や新興国の主催者ではNEVを得意とするブランドを優先させる傾向も散見できるが、そうなると会場内ではBEVを得意とする中国メーカーの存在感が大きくなる。しかし、実際に会場の外、つまり街なかへ出るとそこまで中国メーカー車が走っているわけでもない。

「NEV普及の過渡期ならでは」とも表現できるのだが、会場内と街なかとの乖離のようなものもが、オートショーのプレゼンスを下げてしまっているようにも見える。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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