いまの技術であれば自由自在にクルマを作れる
このようにさまざまなパワートレインに対応するためには、プラットフォームの設計段階でそこまでを考慮しておく必要がある。燃料タンクやハイブリッド用バッテリーの搭載スペースを確保した設計となっているのも当然だ。
リヤサスペンションについてプラットフォームの設計時点で自由度を高めておくことも昨今のトレンドだ。上記のGA-Kプラットフォームでいえば、アルファード/ヴェルファイアでは専用のダブルウイッシュボーンサスペンションをリヤに採用しているのは、そうした自由度が織り込まれていることの証といえる。
同じくトヨタの例でいえば、プリウスは「GA-Cプラットフォーム」に基づいていることで知られている。走りにも定評のあるプリウスも、リヤサスペンションにダブルウイッシュボーン式を採用している。しかし、同じGA-Cプラットフォームでもカローラクロスはトーションビーム式となっている。
このように、プラットフォームが共通だからといってパワートレインやサスペンションまで同一仕様というわけではない。ユーザーにとっては、「まったく別のクルマに感じる」レベルでの作り分けが可能というのが、現代的なプラットフォーム活用法といえる。
基本的に「プラットフォーム」とは、開発・生産の効率化を上げるための基本設計を示していると考えていいだろう。基本となる部分を共通化しつつ、多様な製品ラインアップに対応する自由度の高さも兼ね備えていることも考慮されているのだ。
さらに、プラットフォームを組み合わせることもある。
ホンダから発表された新しいSUV「WR-V」は、250万円以下というアフォーダブルな価格帯だけでなく、日本向けモデルとしては初めてインドで生産されることでも話題となっている。
そうしたリーズナブルな価格を実現するための手法のひとつが、セダンと3列シート車のプラットフォームを組み合わせるというものだ。具体的には東南アジア向けのセダン「シティ」の前側と3列シートSUV「BR-V」の後ろ側を組み合わせている。こうした柔軟性も現在のプラットフォーム設計では求められる部分といえる。
ちなみに、WR-Vのフロントシート下あたりのフロア形状をみると、フィットなどのセンタータンクレイアウトでおなじみの膨らみが確認できるが、WR-Vの燃料タンクは、BR-Vの後ろ半分を使った影響もあって後席下あたりにあるというのはおもしろい。
共通プラットフォームをベースとしたラインアップ展開が生むユーザーベネフィットを手短にまとめれば、「ローコスト&多様性の確保」といえる。そして、前述したようにプラットフォームが共通といっても、まったく同じパワートレインやサスペンションでボディだけが異なるというわけではない。走り味も各モデルに合わせて最適化できるのだ。