Jeepハッキング事件が転機になった
当時、筆者はアメリカネバダ州ラスベガスで開催された、ハッカー関連のイベント「ブラックハット USA2015」を現地取材し、このハッキング行為についてハッカーやハッキングに対応するソフトウエアを開発するシリコンバレーのベンチャー企業関係者らに話を聞いた。
このJeepハッキング事件はその後、日本を含めてグローバルでコネクテッドカーに対するサイバーセキュリティ対策において大きな転換となったといえる。ハッキング対策は、いわゆる「イタチごっこ」であり、対応策は日夜進化することが必要というのがサイバーセキュリティ業界の常識であるようだ。
そうしたなか、各国政府や自動車産業界で、クルマに対するサイバーセキュリティについてグローバルで共通の法規が必要だという話になった。議論の舞台は、自動車基準調和世界フォーラム(通称WP29)だ。国土交通省によれば、WP29は国連欧州経済委員会(UN/ECE)の下にあり、傘下に運営委員会と専門分科会がある。分科会では技術的、および専門的な検討を行う。
また、WP29の目的は、自動車の安全・環境基準について国際的に強調し、政府による自動車の認証の国際的な相互承認を推進することとしている。
このWP29で2021年1月、UN-R155が発効された。これにより、2022年7月から順次、新車におけるサイバーセキュリティ対策が義務化された。
前述のポルシェ「マカン」は同法規への対応が難しいことと、今後はポルシェブランドを含めたフォルクスワーゲングループ全体でBEV(電気自動車)へのシフトを進めるなかでサイバーセキュリティ対応を一斉に導入する事業戦略を進めることが考えられる。