オートレースも競馬も競輪にも熱狂するのになぜ? 日本でオーバルコースのレースが広まらなかったワケ

この記事をまとめると

■日本ではオーバルコースを使ったモータースポーツが浸透していない

■ツインリンクもてぎが誕生してオーバルレースの普及が期待されたがマイナーイメージのまま

■日本のモータースポーツは欧州志向が強いことが原因のひとつ

全米は熱狂! されど日本ではブームの兆しすら見えなかった

 オーバルコースで行われるモータースポーツが、日本ではなかなか人気が定着しない。なぜなのだろうか?

 現存する日本のモータースポーツ向け施設でオーバルコースは、栃木県の「モビリティリゾートもてぎ」のみ。ただし、オーバルコースは2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響でコースが破損して以降、公式レースでは使用されていない。

 同コースは1997年の開業後、「ツインリンクもてぎ」という名称で親しまれてきた。ツインリンクのツインとは、ロードコースとオーバルコース、ふたつのコースが複合していることを指す。

 時計の針を少し戻すと、ツインリンクもてぎの企画について、筆者は1980年代後半から90年代に同企画を進めていた鈴鹿サーキットや本田技研工業(ホンダ)の関係者と定常的に意見交換していた。当初は、ロードコースのみを念頭に企画されたが、日本ではそれまで馴染みの薄かったオーバルレースの醍醐味を日本に伝えるため、企画をオーバルコース併設へ変更した。

 その過程で、鈴鹿サーキットとホンダの関係者はオーバルレースが盛んなアメリカを何度も訪れ、ノースキャロライナ州シャーロットモータースピードウェイ、フロリダ州デイトナインターナショナルスピードウェイ、インディアナ州インディアナポリスモータースピードウェイなど、多方面からの提言を受けた上で、ツインリンクもてぎ(当時)というコース体系となったのだ。

 ツインリンクもてぎの建設が決まって間もないころ、筆者は建設現場を訪れた。案内された場所は、走行順位が表示される「ポジションタワーのちょうど上の地点」という説明だった。そこはまだ平坦でその周辺に小さい山が見えた。それから地面を数十メートルも掘り起こし、その土を周囲に盛ることで、すり鉢状態の地形を作り上げるとのことだった。

 こうして完成したツインリンクもてぎでは、CARTまたIRLのインディカーのシリーズ公式戦やNASCAR招聘レースを実施した。筆者はテレビ中継関係者としてこれらイベントに関わってきた。また、インディカーやNASCARの全米中継番組の日本国内向けテレビ解説を長年わたり担当してきた。

 しかし、本稿執筆時点の2023年末時点でも日本ではオーバルレース、つまりアメリカンモータースポーツに対する認知度はけっして高くないというのが実情だ。コース形状だけで考えれば、日本でも競馬、競輪、オートレース、また水上だがオーバル形状で周回する競艇など、公営競技はオーバルレースである。また、オリンピックや世界陸上などの陸上競技でも、オーバル形状のコースを設定している。だが、モータースポーツにおいてオーバルコースはマイナーな存在(イメージ)のままなのだ。

 結局、日本では1960年代のモータースポーツ創世記から、主なレース主催者の欧州志向が強く、その影響が世の中に浸透しているからなのではないだろうか。

 ツインリンクもてぎ(当時)も、結果的に「大規模な社会実験」としてその役目を終えてしまった。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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