排ガス規制で消えた2ストと同様に4ストも消える?
しかしながら、コンパクトかつローコストで、パワーも期待できる2ストロークエンジンは現在の新車ラインアップからは消滅している。
四輪でいえば、1980年代半ばまで販売されていたスズキ・ジムニー(SJ30型)に搭載されていた539ccの水冷3気筒エンジンが、量産2ストロークエンジンとしては最後といえる。
バイクの世界でも原付スクーターにおいては2000年代まで2ストロークエンジンを見かけたが、公道走行可のモデルとしては、少なくとも国内販売モデルからは姿を消した。
小排気量ではメリットがあるはずの2ストロークエンジンが消えてしまった理由は何であろうか。
ひとつにはドライバビリティに不利な特性があるからだ。同じ排気量であればハイパワーを出すことができるが、バイクの2ストロークエンジンに乗った経験があればわかるように、パワーが唐突に盛り上がる傾向がある。
ドッカン的と表現できるパワー特性が2ストロークエンジンの特徴だ。趣味性の強いスポーツバイクや、そもそもアクセル全開で使うことの多い原付スクーターであれば気にならないかもしれないが、四輪においては運転しづらい特性と感じられるのは欠点といえる。
ハイパワーであることの逆相関といえるかもしれないが、2ストロークエンジンは同等排気量の4ストロークエンジンと比べると燃費性能にも劣る傾向がある。この点においても、2ストロークエンジンを選ぶというインセンティブをユーザーから奪ってしまう。
そして、2ストロークエンジン消滅の最大の理由といえるのが、環境対策=排ガス規制だろう。
じつは軽自動車においても、1970年代から4ストロークエンジンへシフトする動きが活発化していた。その背景にはオイルショック(石油危機)による燃費性能ニーズの高まりもあるが、1973年から日本でも排ガス規制が始まったことが挙げられる。
当時を生きていた人であれば、昭和48年規制、昭和50年規制、昭和51年規制、昭和53年規制と年を追うごとに厳しくなっていく排ガス規制のニュースを見聞きした記憶があるだろう。
当然ながら、排ガス規制をクリアしなければ市販できないわけだから、排ガス浄化において不利な2ストロークエンジンにこだわっていては自動車ビジネスが成立しない。おのずと自動車のパワーソースは4ストロークエンジン一色となったのだ。
余談だが、こうした時代をリアルタイムに知っている筆者からすると、昨今の電動化シフトによって内燃機関そのものが消えてしまいそうなトレンドについても、「歴史は繰り返す」という印象であり、CO2排出量削減への要求がますます高まるであろう情勢からすると、内燃機関を残すための研究開発というのは実を結ばないのでは? と思わざるを得ない。
事実、2ストロークエンジンもあっさりと諦めたわけではない。内容までは紹介しないが、スズキが軽自動車に採用した「TCシステム」やホンダのオフロード系バイクに使われた「AR燃焼」などなど、2ストロークエンジンのメリットを活かそうとした画期的なメカニズムが量産車にも搭載されていた。
それでも2ストロークエンジンは量産車からは消えてしまった。はたして、乗用車において内燃機関は未来永劫生き残れるのだろうか。