売れ行きの予測をするのもメーカーの仕事
新型コロナウイルスではなく、メーカーの都合で購入しにくい車種の典型はトヨタ・センチュリーだ。1カ月の販売基準台数が30台と少ないこともあり、購入したいユーザーの希望に応えることが困難な状況に陥った。
販売会社の顧客対応もさまざまだ。ある販売会社は、「現在センチュリーを所有しているお客さまに限って販売する」と言う。「弊社で20台以上のトヨタ車を購入した経験のあるお客さまに販売する。必然的に法人のお客さまになる」という話も聞かれた。
「新型センチュリーはリースのみ(転売防止対策と思われる)。ウェブサイトで申し込んだ後、お客さまを審査して、センチュリーマイスターと面談する。審査の結果次第では、面談に進めない場合もある。また、面談した結果、お断わりする場合もある」
「お客さまの審査」については、販売店でも困惑していた。「センチュリーの購入を希望されるお客さまは、大半が経営のしっかりした法人です。せっかく購入を申し込まれたのにお断わりすると、気分を害されると思います」。
納期が遅延したり、受注を停止すると、どのメーカーも「ここまで人気が高まるとは思わなかった」と言うがこれは詭弁だ。この言葉をそのまま受け取ると、市場の分析に失敗したことになる。メーカーの市場分析力は当然ながら優秀だから、需要の読み間違いという初歩的なミスを犯すとは考えにくい。
当たり前の話だが、クルマを気持ちよく買えることも、商品力の大切な要素だ。顧客を待たせて苛立たせたのでは優れた商品とはいえない。とくに受注を停止している車種は、ユーザーにとって存在しないのと同じだ。
納期の遅延や受注の停止によって生じる転売と中古車価格の高騰は、市場の混乱で好ましくないが、そもそも納期が適正であれば転売も発生しない。メーカーは商品を開発するときに、適正な納期も商品力の大切な要素として加えるべきだ。