この記事をまとめると
■ヒョンデがEVのメリットを活かした新機構を公開
■「e-Cornerシステム」は全車輪が90度操舵できるのが特徴だ
■狭い場所でもその場で方向転換できたり駐車が容易になるメリットがある
全車輪が90度に曲がる!?
世界第3位の新車販売規模を起亜(キア)を含めたグループで達成している韓国のヒョンデ(現代)は、日本市場では電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)による電動車両の販売に専念する。そうした折、EVの機構を活かしたe-Corner(イー・コーナー)という技術を公開した。
EVは、4輪個別にモーターを取り付けることができる。エンジン車や、EVでも左右に1個のモーターで対応する場合と違い、車輪へ動力を伝える駆動シャフトを使わずに済む。これにより、車輪を真横(つまり90度)転舵することを可能にする。駆動シャフトがあると、ユニバーサルジョイントの曲げ角の限界により、大きな転舵が難しいのだ。
車輪を90度転舵できるとどうなるか。まず、前後の車輪を90度転舵すれば、真横にクルマを移動させることができる。その状態で、前後のタイヤの回転を逆方向にすると、その場で方向転換することもできる。
次に、前輪または後輪だけ90度転舵して駆動すると、反対側の車輪を軸にして向きを変えられる。
以上の機能は、クルマの幅寄せや方向転換、あるいは車庫入れなどで、道幅などに余裕がなくても、車体寸法ほど空間の確保ができれば、自由自在に進みたい方へ移動できる。
ほかに、前後のタイヤを同じ方向へ斜めに転舵すると、斜め前方(あるいは後方)へ、平行移動するように車線を変えることができる。
それぞれの操作には、適切な操作方法や制御など、新たな取り扱いが必要になるかもしれないが、世界中でクルマの保有台数が増え、なおかつ車体寸法が年々大型化していく現状において、それでもクルマが自由に動きまわれる可能性をe-Cornerは示している。
そしてEVが、単に脱二酸化炭素など環境問題解決の回答であるだけでなく、新たなクルマの価値を提供する存在であることも示している。
じつは、e-Cornerの動きは、馬ができる動作でもある。馬はその場で方向転換できるし、斜め前方へ平行移動するように軌跡を辿ることができる。4つ足動物である馬は、足の運び次第でそうしたことができるのだ。
ガソリンエンジン車の誕生から140年近い時を経て、EVであることによって、馬に近い行動をとれるようになるという、興味深い技術でもある。これを、いかに交通社会のなかに活かしていけるかは、人間の想像力と知恵の働かせ方にかかっている。