この記事をまとめると
■フォルクスワーゲン・ゴルフのスポーツモデルとして知られているのが「GTI」と「R」だ
■「GTI」と「R」にどんな違いがあるのか、性格の違いとともに説明
■ゴルフVII以降は「GTI」と「R」でより性格の違いを見せることで差別化を図った
ゴルフ「GTI」と「R」って何が違うの?
FF2ボックスのジャンルを確立し、グイグイ進化させてきたフォルクスワーゲン・ゴルフ。好き嫌いは別としても、存在の偉大さを疑うクルマ好きはいないはず。そんなゴルフですから、ライバルたちが「目指せゴルフ、追い越せゴルフ」としのぎを削ったことも動かしようがありません。
たとえば、ニュルブルクリンクのラップタイムのように表層的な速さを基準にすれば、シビックタイプRやメガーヌRS。もはやホットを通り越して、レーシングカーのようなクルマも大人気でした。また、上質やハイクラスをうたうコンパクトカーも格段に増え、「質素、だけど十分」というゴルフでは勝負しづらい時代を経てきたのです。
むろん、フォルクスワーゲンだって手をこまねいていたわけではありません。ゴルフのグレードを拡充したことに続き、商品力の向上を目指し、ゴルフ3世代に至ってはついに全輪駆動のハイパワーモデル「R」を登場させたのです。2.8リッターの狭角V6エンジンを搭載したVR6は、ひと皮むけたかのようなパフォーマンスで、次のR32になるとさらに排気量を増やし、質素とは対照的に「贅沢なゴルフ」というポジションを確立。並みいるライバルたちに一石を投じたといえるでしょう。
ここで気になるのが、ゴルフには初代から「GTI」というスポーティバージョンが存在していたにもかかわらず、どうして「R」という新型の追加に踏み切ったのか、というポイント。
ご承知のとおりGTIはホットハッチの代名詞であり、また手の込んだエンジン、きちんと作りこまれた足まわりなど高い商品性を誇るもの。歴代モデルがいずれも「さすがGTI」と評価されてきたわけですから、こちらの商品力を上げさえすれば競合車を蹴散らすことも難しくはなかったはず。
このへんがGTIとRの違いを紐解くポイントにほかなりません。なにしろ、贅沢バージョンとして設定されたはずのRにしても、ゴルフVIから全輪駆動は継続されつつもシリーズエンジン、すなわち2リッターターボにとどまっています。市場のダウンサイジングに応えたとするならば、GTIとの差ははっきりいってパワーと駆動方式だけにとどまってしまうのです。GTIのよくしつけられたエンジンや、オプションのDCCサスペンションシステムはRの走りと同等とまではいかなくとも、その差はわずかなもの。
もっとも、フォルクスワーゲンをかばうわけでもありませんが、この時期のゴルフはライバルの攻勢も手伝って、いくらか迷いが見えた気がします。いわば、フォルクスワーゲン自身が「ゴルフ、かくあるべし」という枠組みに縛られてしまったのかもしれません。
ですが、次のゴルフVIIになると迷いは吹っ切れて、いよいよGTIとRそれぞれの存在価値が高まっていくことになりました。