この記事をまとめると
■当時トールワゴンモデルとして人気だったトヨタ・ファンカーゴを振り返る
■フラットな荷室空間による積載性がさまざまなニーズにマッチした
■2002年にマイナーチェンジを行ったが2代目モデルは発売されなかった
コンパクトトールワゴンでありながら挑戦的な試み満載!
1999年1月にトヨタの新たなコンパクトカーとして誕生したヴィッツ。そのプラットフォームを使用した派生車は数多く存在するが、同年8月にセダンモデルのプラッツと共に登場したファンカーゴは、背の高いボディを組み合わせたトールワゴンとなっており、その使い勝手の良さからスマッシュヒットを記録したモデルだった。
もともと欧州市場を意識して誕生したモデルということもあり、スライドドアこそ持たないものの、カングーなどのようなフルゴネットタイプのスタイルとなっていた。そのため欧州ではヤリス(ヤリスはヴィッツの輸出名)ヴァーソ、つまりヤリスのバンという直接的な車名が付けられていたのだ。
そんなファンカーゴは、5ナンバーの乗用車でありながら、“カーゴ”と名が付くように荷室空間を重視したものとなっており、後部座席は折りたたんで格納する前提のベンチシート(メーカーではリトラクタブルシートと呼称)で、ダイブダウン格納させることでフラットな荷室が生まれて自転車や小型バイクなどがそのまま収納できるほどのスペース容量を誇っていた。
またその広い室内スペースを活用し、車いすに乗ったまま乗車することができるスロープタイプの福祉車両が存在し、狭い道路などの地域で活躍する姿を多く見ることができたのも特徴と言えるだろう。
搭載されるエンジンはヴィッツにも採用された1.3リッターと1.5リッターで、ヴィッツ兄弟のなかでは比較的大柄なボディや荷物を積載することを考慮してか1リッターモデルは設定されず、トランスミッションも4速ATのみとなっていた。
2002年8月に実施されたマイナーチェンジでは、フロントマスクのフェイスリフトが実施されたほか、新たに後部座席の快適性を重視し、格納はできないもののしっかりとしたリヤシートを備えた「リアリビングバージョン」を設定し、従来の格納式リヤシート車は「ペアベンチバージョン」として継続設定された。
ちなみにファンカーゴはトールワゴンとしてはかなりチャレンジングな試みを多く実施したモデルでもあり、このクラスの車両にも関わらずツインサンルーフのオプションを設定していたり、純正でマジョーラカラーの車体色を持った特別仕様車をリリースしたり、モデリスタから2CVを思わせる丸型ヘッドライトを備えたカスタマイズカーの「VF130モデリスタ」が限定販売されたりと、さまざまな仕様が存在していたのも特徴だった。
しかし残念ながらファンカーゴとしては2代目モデルが登場することはなく、近いコンセプトを持ったラクティスが実質的な後継車種として登場した。
ただ近年ではファンカーゴのキャラクター性が再評価されているようで、カスタマイズを施されてリフレッシュ販売されている個体も増えている。