この発明がなかったらいまの自動車はないでしょ! 「スゲー」しか出てこない自動車界の大発明5つ (1/2ページ)

この記事をまとめると

■自動車は誕生してから250年以上の歴史を持つ

■クルマは常にユーザーが安全かつラクに使用できるよう進化してきた

■画期的でありながらも誕生当初は荒削りであった技術も時代が進むにつれ進化してきた

自動車は誕生して2世紀半以上の歴史がある

 世界初の自動車は、馬車の車体に初歩的なエンジンを積む構造だった。エンジンの力で走る乗り物、馬なしで自立して走る乗り物、ゆえに「オートモビル」と名付けられた。その自動車誕生から137年(ベンツ1号車)、キュニョーの蒸気機関搭載車を自動車とするなら250年余の歴史を持つことになる。

 この間に自動車はあらゆる面で進化、発展を遂げてきた。いい方を変えれば、新メカニズムの登場が繰り返されてきたわけだが、そろそろEVが自動車の主力を占めそうな見通しとなってきた現在、これまでの歴史を振り返って「なるほど、これはすごい、頭がいい」と感心させられるメカニズム、発明を独断と偏見で選んでみた。

 まず、自動車の歴史のなかで、これはすごいメカニズム、発明と思われるもののうち、その半数程度は他分野からの応用だった。シートベルト(1929年航空機用/ボーイング社)、ABS(アンチロックブレーキ1936年鉄道車両用/ボッシュ社、1947年航空機用/ダンロップ社)、ターボチャージャー(1915年航空機用/スルザー社)、そして空力関連の機能パーツ類などで、ここでは自動車が発端となるメカニズムについて振り返ってみたい。

 まず、衝突安全に関して画期的、といえる装備がエアバッグだ。正確には、SRSエアバッグといわれるように、シートベルトとセットにして、その補助装置として乗員の安全を守る装備として実用化されているが、シートベルト同様、考案当初は否定的な見方が多かった。ちなみに、シートベルトを装着して衝突事故となった場合、腹部に強い衝撃を受けて内臓破裂を引き起こす、という否定論が多かったのである。

 衝突時に衝撃を受けた方向からエアバッグを開き、乗員の体を受け止める衝撃吸収装置のエアバッグだが、衝撃を受けてからエアバッグが展開するまでに時間を要し、現在のような火薬式、電子スイッチ式といった反応時間の速い方式が考え出されるまで実用化には結び付かなかった。

 現在と同じ方式のエアバッグが採用されたのは、オプション装備として1980年にメルセデス・ベンツSクラス、日本車では1987年のホンダ・レジェンド、全車標準装備(運転席)となったのは1992年のホンダ・ドマーニが初となっていた。現在では必要不可欠な安全装備と認知されているエアバッグも、普及当初はオプション装備だったという点が興味深い。

 同じく安全装備で、走行車両のスピンを防ぐ働きをする車両挙動安定装置の考案も、特筆すべきできことと言えるだろう。原因は何であれ、スピンしかかっている車両の挙動を安定させ、何事もなかったかのように車両の挙動を保つ車両挙動安定装置の実用化は、自動車史にとって、大きな出来事だったといえるだろう。

 製品化(実用化)は、メルセデス・ベンツのESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム=1995年)が世界初で、わずかに遅れてトヨタのVSC(ビークル・スタビリティ・コントロール=1995年)が登場している。

 このシステムは、その効果から考えるとアンチスピンシステムといい換えてもよく、基本的には4輪に独立して作用するブレーキシステムと駆動力(エンジン出力)を制御するシステムから成り立っている。具体的なメカニズム名で言えば、発展型のABSとTCS(トラクションコントロールシステム)となる。車両の挙動変化、いい換えれば前輪の横滑り(=アンダーステア)と後輪の横滑り(=オーバーステア)を制御する仕組みで、とくに後輪の横滑り制御は、スピン状態を回避する働きとして重要な意味を持っている。

 システムの作動を説明すると、後輪が横滑りしている状態(旋回と同一方向のヨーモーメント、過大なヨーモーメント=スピンモーメントが発生)では、スピンモーメントと逆方向のモーメントを発生させ、スピンモーメントを打ち消す働きをする。クルマの動きに置き換えると、旋回外輪となる前後輪に制動力を発生させ(アンチスピンモーメントの発生)、同時に車両の速度を抑えるためにエンジン出力を絞ること(TCSの稼働)で、スピン状態にならないよう車両挙動を修正するわけだ。

 実際、大出力のエンジンを積むスポーツカーや高級サルーンのほとんどが採用する後輪駆動方式で、ともすると陥りやすいスピンに対し、車両搭載のシステムが事前に防いでくれることは、予防安全上の見地で絶大な効果がある。もちろん、前輪が滑るアンダーステアに対しても有効だが、車両の方向性が失われてしまう後輪駆動車のオーバーステアを防ぐという意味での効果は大きい。


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