合成燃料もバイオ燃料も水素も性能はもはや十分! カーボンニュートラルへの壁は「いくらで作れるのか」のコスト問題だけだった (2/2ページ)

新燃料は不満ないレベルで活用できるがまだまだ高価すぎる

 一方の水素燃料、水素は単位質量あたりの発熱量はもっとも大きいのだが、単位体積あたりの発熱量は相当に小さくなってしまう。密度が約0.09と非常に小さいためだ。このため、内燃機関のシリンダー内に、どれほど多く(重量的に)の水素を送り込めるかが性能確保のカギとなるようだ。

 もちろん、空燃比の問題もあり、現状、最先端の開発レベルにあるトヨタの開発エンジニアにどれほどなのかを尋ねたこともあったが、残念ながら開発途上の機関であり、企業秘ということで明かしてもらうことはできなかった。

 これは、よく知られているスーパー耐久で実験参戦を繰り返す水素燃料カローラのことだが、最新の状態では、ラップタイムを見るとガソリン車に近い性能水準に達していることが確認されている。

 バイオ燃料は、生物資源を原料とした燃料のことで、バイオマス(動植物から作られる有機資源のこと)燃料と呼ばれることもある。有機資源(炭素を含む)であるため、燃焼させると二酸化炭素を排出することになるのだが、燃料の元となる植物が育つ過程の光合成の作用により、燃焼で排出する際の二酸化炭素と植物が育つ過程で吸収する二酸化炭素が相殺勘定となり、カーボンニュートラルになる、という考え方が成立している。

 バイオ燃料車も水素燃料車同様、サーキットレースで試験的に使われ、段階的に進化を遂げている最中だ。先駆けとなったのは、バイオディーゼルで参戦したマツダだったが、2023年の富士24時間では、軽油にバイオ燃料を混入して使う混合燃料ではなく、100%バイオ燃料による「マツダ3バイオコンセプト」仕様車を投入。ガソリン車との混走でもあり、また軽油100%の車両と走り較べたわけでもないため、バイオ燃料車の性能水準を測ることはできなかったが、24時間で529周、2414kmを走って完走を果たしている。

 メーカーの研究室レベルでは、合成燃料(製品化の情報は未確認)、水素燃料、バイオ燃料の対ガソリン、対軽油の性能比較が行われ、現状でどの程度の動力性能が確保されているかは不明だが、これらは理論的に不満のないレベルで活用できる新燃料だと判断してよいだろう。むしろ、現状考えられる大きな問題は、燃料のコストである。普及するには、現状の石油製品並の価格帯に落ち着かないと、市場が目を向けることはないように思える。

 いずれにしても、石油燃料を使う自動車の製造、販売が2030年をメドに禁止されることに変わりはなく、EVの動力源となる充電電気の発電方法まで含め、また新たな変革が起きる可能性も十分ある。二酸化炭素が大気中にとどまる期間は、最長1000年と言われるだけに、なんとしても削減目標値は達成しなければならない状況で、これから10年先の自動車がどんな形態になっているのか、怖くもあり、楽しみでもある。


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