故障や修理まで楽しめるなら楽しい相棒に!
初代ポルシェ・ボクスターにおいても、事情はおおむね同様である。
こちらは最近ちょっと相場が上がっているような印象もあるが、それでも総額120万~150万円ぐらいで、1998~2003年ぐらいの中古車を見つけることはできる。
ボクスターの場合は、カイエンほどの重量はないということで、初代カイエンほど各部にかかる負担が大きいわけではない。また、有名なインターミディエイトシャフトの問題も、ポルシェジャパンによるサービスキャンペーンで対策品に交換されている個体であれば、とくに気にする必要はない。それゆえ、運が良ければ(あるいは適切な吟味ができれば)とくに問題のない、快調に走る初代ボクスターを総額100万円台前半で入手できる可能性はある。
だがそれは「可能性」の話であり、そもそも「適切な個体を適切に吟味できること」という前提条件なしには、可能性はかなり低くなる。で、ぶっ壊れた部品を交換するとなると、やはり初代ボクスターもそれなりに高い。これも不慣れな人が不用意にポルシェセンターへ行ってしまったら、おそらくは失神して昏倒するだろう。
それゆえ、初代ボクスターの格安物件も――初代カイエンの格安中古車ほどではないが――輸入中古車ビギナーにはあまりおすすめはしたくない1台なのである。
以上は主に「よくわからないけど、これからポルシェライフってやつを始めてみようかな! 格安予算で♪」などと、お花畑的なことを考えている中古輸入車ビギナーに向けた言葉である。だがもしも、あなたが酸いも甘いも噛みわけた中古車愛好家であるならば、話は別だ。
部品のアッセンブリー交換をポルシェセンターで行うとなるとひたすら高いが、ポルシェに強い一般整備工場に格安OEM部品を使っての修理をお願いできたり、なんなら自分でパーツを輸入したりヤフオクで買うなどして消耗部品を交換できたりするのであれば、初代カイエンもボクスターも、比較的お安い予算で維持することは十分に可能だ。
それでもいろいろとあちこちに不調箇所は出てくるはずだが、こういったマニア層は「それをコツコツ直していくのも楽しみのひとつ!」と考えることができる場合が多いため、大した苦にはならないかもしれない。
つまり、結論として初代ポルシェ・カイエンならびに初代ボクスターの格安中古車とは、ビギナー向けではなく「マニア向け」の案件なのだ。そして、もしもあなたが「いまはぜんぜんマニアじゃないけど、これからはマニアになります!」と決意できているのであれば、私は止めない。それはそれで面白い毎日が始まるはずであり、快調に動くカイエンやボクスターは、それが初代であっても、かなり素晴らしい乗り物である。おすすめである。
だがその決意がないのであれば――まぁもう少し高くて、もう少し新しい中古ポルシェを買うことをおすすめする。世の中に「うまい話」はないのだ。