この記事をまとめると
■日産の新型フェアレディZの納車が進んでいない
■1カ月あたりに100台に満たない台数しか登録されていないのが実情だ
■納期遅延のなかで2024年モデルとニスモ仕様車が登場しておりファンが動揺している
後出しジャンケンみたいな売り方にファン憤慨
日産フェアレディZは日本を代表する生粋のスポーツカーだが、現行型を発売した直後の2022年8月には受注を停止していた。需要に日本仕様の生産規模が追い付かず、納期が伸びたためだ。2023年におけるフェアレディZの登録台数を見ると、1カ月当たり80〜90台だが、これはすべて発売直後に受注した車両だ。納車待ちのユーザーが膨大にいるため、2023年12月下旬時点でも、受注を再開できていない。すでに1年以上にわたってフェアレディZを買えない状態が続いており、これでは実質的に存在しないのと同じだ。
それなのにフェアレディZは、受注を停止している2023年8月に2024年モデルを発表した。フェアレディZの契約を済ませたユーザーとしては、納車を待っている間に2024年モデルに切り替わったことになる。しかも2022年に受注を開始したときに比べて、価格も高くなった。
さらに、フェアレディZの2024年モデルには、フェアレディZニスモも加わっている。ニスモは専用のチューニングを行って、最高出力は標準グレードの405馬力から420馬力に、最大トルクも48.4kg-mから53.0kg-mに向上している。ボディ剛性、サスペンションのスプリングレートやショックアブソーバーの減衰力なども変更を受けた。
納車を待つユーザーの間では「顧客を1年以上も待たせておきながら、さらに新しい仕様を加えるのか?」という不満も生じるだろう。また、フェアレディZは生粋のスポーツカーだから、すでに注文したユーザーのなかには、「ニスモがあるなら、それを買いたかった」という人もいるに違いない。
この点を販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「フェアレディZニスモの販売は、すでにフェアレディZを注文されているお客さまのなかから、抽選で決める。新規のお客さまに売ることはない」
この方法なら、フェアレディZをすでに注文したユーザーから不満が生じることははないだろう。ただし、もともとフェアレディZに詳しい人なら、ニスモが追加されることも予想できた。「ニスモが追加されたら注文しよう」と考えていたユーザーにとっては、予想外の展開になる。「ニスモの追加と、既存グレードの納車を待つ人に売る方法を、予め明らかにして欲しかった」と思うだろう。
納期が遅延して受注を停止させている車種では、フェアレディZに限らず、納車を待つ間に改良やマイナーチェンジを行う可能性がある。これらの車種の大半は、趣味性の強い高価格のSUV、ミニバン、スポーツカーなどだから、ユーザーも寛容で改良に伴う価格アップなども許容するかも知れない。
しかし、メーカーはそこに甘んじてはならない。納期の遅延は顧客満足度を低下させ、転売による中古車価格の高騰も招く。常識的な納期で納車できることも商品力の大切な要素だから、車両の開発や生産も、そこまで見越して行わねばならない。