まるで痛車のようなロールス・ロイスはかの「ジョン・レノン」の愛車! 見た目もスゴイけど中身もなかなかの改造っぷりだった (2/2ページ)

ペイントを保護するためにいまは博物館に展示中

 さて、ウィーバーの仕事は少数民族ロマ族のキャラバンや運河のはしけにあしらわれている模様を緻密に描き、ルーフには占星術の十二宮サイン、ジョンのてんびん座も加えられました。ただし、ウィーバーが用いた塗料はクルマ用でなかったため、後に寄贈された美術館は、「動態保存するために、年に1度エンジンをかけて走行しなくてはならないのですが、そのたびにペイントがひび割れ、はがれてしまうのです」と、かなり苦労した模様。

 また、ファロンが行ったインテリアのカスタムで面白いのは、リヤシートがダブルベッドに変形できる機構や、追加したレコードプレーヤーの針が飛ばないサスペンションシステム、さらに車外向けスピーカーが装備され、ジョンはマイクで通行人に声をかけて驚かせたという逸話も伝わっています。

 1970年、ジョンとヨーコがニューヨークへ移住したのに伴って、痛車ファントムもアメリカに渡りました。が、1977年にはアメリカの税金に辟易したジョンがスミソニアン博物館のマンハッタン支部に寄付。20万ドル以上の税額控除を受けたとされていますが、実際にいかほどに判断されたのかは詳らかになっていません。

 その後、1985年には博物館が売却を決め、オークションに出品したところ、229万9000ドル(当時のレートで約5億5000万円)の値が付いたそうです。

 購入したカナダの実業家、ジム・パティンソンはバンクーバーで開催されたエキスポ86の宣伝用に痛車を使った後はカナダの博物館に寄贈という太っ腹。前述のとおり、脆弱なペイントのために日常のアシには使いづらかったのかもしれません。

 現在もカナダのロイヤル・ブリティッシュ・コロンビア博物館に収蔵されているジョンのロールスロイスですが、近年では2017年に「サージェント・ペッパー」の発売50周年を祝うイベントにブッキングされるなど、そのインパクトはいささかも衰える様子がありません。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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