この記事をまとめると
■いすゞエルフがフルモデルチェンジ
■新しい変速機ISIM(アイシム)について解説
■これまで6速AMTだったがまったく機構の違う9速となる
変速機の進化によって環境性能を高めることも可能
いすゞは大型車のGIGA(ギガ)で12段変速のAMT、スムーサーGxを展開、中型トラックのフォワードでは6速MTをベースにロックアップクラッチ付きのトルクコンバーターと組み合わせて自動変速も実現したスムーサーFxを用意している。
小型トラックのエルフにも6速AMTのスムーサーExを用意してきたが、今年エルフがフルモデルチェンジしたことで変速機も大幅進化している。それが新しい変速機ISIM(アイシム)だ。
インプットシャフトからカウンターシャフトへ3段のギヤを配し、カウンターシャフトとアウトプットシャフトへも3段のギアを配することで、それぞれのギヤの噛み合いを組み合わせ、9段変速を実現しているのだ。しかも発進用にはトルクコンバーターを使いながら、変速用にクラッチ機構はデュアルクラッチとしている。このいすゞの新しい変速機ISIMの構造。MTをベースとしながら、DCTとして自動変速機構を組み込み、発進用にはトルクコンバーターを組み合わせる。クラッチによりインプットシャフトを2本に分け、そこからの力の伝わり方を変えることで継ぎ目のない変速を実現する。
1速からの奇数の変速段用のクラッチと偶数の変速段用クラッチを使い分けることで、変速を素早くかつスムースに完了させる。変速時に駆動力が途切れないので、駆動系への負担も減り、効率のいい走りで燃費も向上する。早い話が、このISIM、仕組みとしてはポルシェや日産GT-Rが採用しているDCT(ポルシェはPDKと呼ぶ)とほとんど同じ構造(こちらはトルコンがなくクラッチで直接発進させている)と言っていいものだ。速く走らせるためのDCTは、変速比を変えればトラックの燃費や耐久性を高めるためにも役立つ変速機なのである。
構造としては偶数段用のクラッチがインプットシャフト前側に接続されていて、奇数段用は後ろで分離されている。奇数段用のインプットシャフトには2つのギヤがスリーブで切り替えられるようになっていて、ここで3段の変速機構が備わるのだ。
さらにカウンターシャフトにもスリーブが1つ、アウトプットシャフトには4つもスリーブがあり、この作動を切り替えることで駆動力の伝達経路が変わって、9段の変速を実現しているのである。ちなみにポルシェPDKは7段、GT-RのDCTは6段だから、ISIMのほうが複雑で変速比幅も広いのだ。たとえば、2速時の駆動力の伝達と、3速時の伝達。繋がっている多板クラッチが違うためインプットシャフトからの出力が変わり、その後のギヤの選択によって変速比が決まる。
トラックの場合、1速は積載状態での坂道発進など特殊な用途にもちいるスーパーローギヤだから、実質8段ギヤとも言えるが、それでも十分に多段でワイド&クロスギアレシオを誇っているのだ。電動化も効果的だが、こうした変速機の進化でも環境性能を高めることはできる。ハイブリッドでも変速機の役割は重要といえそうだ。