この記事をまとめると
■水素のモビリティへの利用が進んでいる
■東京ではFCバスが走っている
■トラックも水素利用に向いている
FCトラック普及のハードルは低い
水素をモビリティに利用するのは、いろいろなハードルがある。水素は自然界に独立して存在しているものではないから、水や油などさまざまなものから取り出す必要があり、その際にはエネルギーを消費する。
だが、すでにモビリティへの利用は進んでおり、路線バスではすでにFCバスが都内を走りまわっている。今後も水素ステーションを増設して、FCバスの割合を増やす計画もある。すでに東京都内ではFCバスの「トヨタSORA」が路線バスとしてたくさん走っている。利用者のなかにはただのEVバスだと思っている人もいるだろうが、水素を燃料としたFCバスがすでに使われているのだ。
そんなFCバス以上に水素利用の普及を進めていけるモビリティがトラックだ。定期便のトラックは走行ルートが決まっているため、そのルート上に水素ステーションを設置すれば、運行中に立ち寄って水素を充填しても、時間的なロスが少ない。
そうでなくても高速道路で結ばれた東名阪(東京・名古屋・大阪)や広島、福岡といった都市部をまわるルートであれば、水素ステーションをインターチェンジ近くに開設すれば水素を補充して運行しやすい。その水素ステーションもトラック用に大流量のディスペンサー(充填用のノズル)を備えた充填機が開発されている。さまざまな使われ方をする乗用車よりも、トラックのほうが普及のハードルはずっと低いのだ。
いきなり水素を大量に供給できるようになることは難しいから、現在から段階的に水素の生産を増やしていくことになる。けれども再生可能エネルギーによって、水素ステーションごとに水を電気分解して水素を生成し、クルマなどのモビリティに充填させる、なんてのは相当先の夢のような話だ。写真のギガはホンダといすゞが共同開発したFCトラック。これから実証実験が行われていく。
乗用車やバスで燃料電池が使われているのは、まだそれほど消費量が大きくないから、採算が取れなくても先行投資やイメージ戦略で実施している部分も大きい。しかし、トラックで本格導入すれば、採算が取れなければとても続けていくことはできないから、補助金だけでなく水素の生産や運搬コストも下げていかなければ持続可能性は低いままだ。
現時点でも、モビリティでの水素利用は、日本国内で消費されている水素の1%程度に過ぎない。赤字で採算が取れない事業なので、水素を普及させるには生産量を増やすのではなく、効率よく水素を作り出す手段、車両に充填する手段を確立することが必要だ。写真のトレーラーは、圧縮水素より安全で効率も高い液化水素を運搬できるよう開発されている。
日本はそうした水素利用の技術に関しても世界をリードする存在であるから、このまま技術開発を続けて、国内で水素を安定利用することを目指している。それだけでなく、安く生産できるようになり、水素利用の設備などを輸出する産業も発展させていくことが求められるのだ。