「カーボンニュートラル」=「エンジンの廃止」ではない! トラック業界から考える「燃料生成」の手段 (2/2ページ)

さまざまな原料から燃料を作る研究が行われている

 現在、欧州などで普及が進んでいるのはHVO(水素化植物油)と呼ばれるもので、これは食用廃油などを濾過、水素化分解してサラサラの液体にして燃料とするもので、SAF(サステナブル航空機燃料)とほぼ同じものだ。たとえばユーグレナが供給するサステナは、微細藻類のユーグレナから取り出した油脂と食用廃油から作ったHVOをブレンドして作ったバイオ燃料だ。

 元々植物油だからCO2を吸収した物質で、リサイクルによって生まれるものなので環境には優しいが、人間が消費したあとの油なので生産量には限界がある。実際、すでに食廃油は奪い合いが始まり、高騰している。

 そんな油を使わなくても、水素と空気中のCO2から合成燃料を作り上げれば、それを燃やしても大気にCO2が戻るだけなので増えるわけではないから、カーボンニュートラルだ。ただし、合成燃料は作り上げるのにまだ相当なコストがかかる。

 食用ではない植物を育てたり、微細藻類を培養してバイオ燃料を作り上げるのも、大気中のCO2を吸収したものだから、燃焼させてCO2を排出してもカーボンニュートラルだ。ブラジルではサトウキビを、米国ではとうもろこしを栽培して、それを発酵させてアルコールを作りバイオ燃料としているが、大量に収穫できる広大な土地と適した気候がある地域ばかりではない。

 人間や家畜の食糧、肥料となるものを燃料にしてしまうと食糧などとの競合が起こってしまう。そこで燃料専用の原料を育てる必要が生じるのだ。生育のスピードが速く、繊維質を酵素が分解することでアルコールになる第2世代のバイオメタノールとして研究されている植物もある。

 現在、果敢に研究されているのは藻類だ。微細藻類は自然界にも数千種類がおり、そのなかでも油を溜め込む種が存在する。微細藻類に油を作り出させるという研究も10年以上続けられており、現在はゲノム編集による効率の高い油分生成や、油分の取り出し方法などが研究されている。


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