プロ同士が互いを気遣う「街道仁義」! トラックドライバーが使うさまざまな「合図」とは

この記事をまとめると

■トラックの活躍なくして私たちの暮らしは成り立たない

■トラックのドライバーたちには同業者を気遣う合図がいくつか存在

■元トラックドライバーの筆者が活用していたものを紹介する

同業者を気遣う合図とは?

 日々、私たちの暮らしを支えてくれる数多くのトラックたち。人が寝静まった時間帯に眠気と戦いながら街道筋を駆けてくれているトラックドライバーの活躍なくして、私たちの暮らしは成り立たない。そんなトラックドライバーたちには、同業者を気遣う合図がいくつか存在する。近年ではあまり見かけなくなったような感じもするが、筆者が実際に大型トラックのハンドルを握っていた時代に活用されていたものを紹介しよう。

 まず一般的なのはハザード。譲ってくれたり前方が渋滞しているときに活用するハザードは、トラックドライバーだけではなく一般車のドライバーにも浸透している。しかし、トラックドライバーにはもうひとつの活用法が存在する。それは一般道を走行しているとき、信号や右折車などの影響でブレーキを強く踏み込むとき。後続車がトラックであれば、止まりますよという意思表示としてハザードを点滅させるのだ。そうすることで追突や必要以上の急ブレーキを防ぎ、互いの安全を確保するのだ。

 ヘッドライトを消すというのも、一般車両にも浸透している。その多くが信号待ち。対向車が眩しくないようにするのと同時に、横断歩道を渡る歩行者の安全も兼ねている。右折や左折をしてきた車両が自車のヘッドライトの眩しさで歩行者が見えなくなるという「蒸発化現象」を、未然に防いでいるのだ。

 さらには、高速道路でもヘッドライトを消す「ライトカット」は重宝されている。これは、追い越し車線を走るトラックが走行車線のトラックに「前にどうぞ」と進路を譲るときに、ヘッドライトを消すというもの。走行車線のトラックが前を走るトラックに追いつくなどの理由から、追い越し車線に出たがっているなと察知した追い越し車線のドライバーが、ライトカットして進路を譲るのだ。

 それにより走行車線を走るトラックがハザードを出しながら追い越し車線へと移動し、前走車を追い越したら走行車線に戻る。その際、追い抜かれた走行車線のトラックが「もうわたしのトラックを完全に追い抜いたので、走行車線に戻れますよ」ということを伝えるべく、ライトカットをする。そして走行車線に戻り、ハザードを焚く。このような気持ちのいい流れが、高速道路を走る長距離ドライバーたちの間で展開されていたのだ。

 もちろん、ライトカットは夜間限定のもの。昼間であれば、追い越し車線のトラックが「前にどうぞ」と進路を譲る場合、右ウインカーを出して意思を伝える。ただ、譲られる側のトラックが降りる出口が近いなどの理由で追い越し車線に移動しない場合、左ウインカーを出して追い越し車線のトラックにその旨を伝える。そのようなルールがあって、日本の物流は成り立っているのだ。

 先述したが、これまでに書いたようなトラックドライバー同士の街道仁義を見かけなくなったような気がしてならない。このような挨拶ごとは、不思議と眠気やイライラを吹き飛ばしてくれるもの。プロドライバーとして互いを尊重し合い、プロならではの意思表示がきちんとできるような時代へと再びなってほしいと願うばかりだ。


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