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業界のご意見番「清水和夫」が「ダイハツ問題」を斬る! 「かつてのダイハツは安全の追求に燃えていた」【短期連載その1】 (2/2ページ)

業界のご意見番「清水和夫」が「ダイハツ問題」を斬る! 「かつてのダイハツは安全の追求に燃えていた」【短期連載その1】

この記事をまとめると

■第三者委員会の調査で数々の不正が明らかになったダイハツ

■ダイハツは1998年の車両規定変更の際には衝突安全でトップレベルの技術を持っていた

■筆者は最近のダイハツから安全性を熱く語るエンジニアが減っていたことを感じていた

ダイハツの不正のファクトを整理して今後を考える

 2023年は自動車業界にとって厄年となったようだ。長年続いていた数々の問題が浮上し、該当企業は謝罪会見に明け暮れた。なかでもダイハツの不正問題は言葉を失うほどの驚きだった。ここではすでに発表されているファクトを整理しながら、なぜ不正を行ったのか、またなぜ不正を未然に防ぐことができなかったのか、そして実際のユーザーはどうなるのか、ダイハツのこれからの行方について、筆者の個人的な意見を述べたいと思う。

■衝突安全ではトップレベルの技術を持つダイハツ

 まずはファクトの整理だが、ダイハツは1998年にトヨタが51.2%の株式を取得し、完全にトヨタグループの一員となった。1998年というと、軽自動車(以後軽カー)の車両規定が大きく変わった年だった。それまでの軽カーは貧しかった戦後の国民に安いクルマを提供するために作られた国民車であり、そのためエンジンの排気量や車体の大きさが規定され、その枠のなかで各メーカーが凌ぎを削りながら競争してきた。やがてエンジンの排気量は改定され、ついに車体の大きさも拡大されたのであった。

 ダイハツは安くて安心して使える軽カーを専門に作るメーカーとして、その名を馳せてきた。軽カーの衝突安全の保安基準を小型車(登録車)と同じレベルにするという法改正では、ダイハツはどの軽カーメーカーよりも先んじて最高の安全技術を開発することに燃えていた。もちろんGOAボディを推し進めていたトヨタの技術協力があったことはいうまでもない。

 新基準では軽カーのボディサイズも拡大されたが、小型車よりもコンパクトなボディでも、十分な安全基準をクリアすることができたのだ。

 しかし、軽カーの衝突安全がトピックスとなっていた1998年に厳しいオフセット衝突に初めて対応できたのはダイハツではなくホンダだった。1998年10月に発表したホンダライフはクラストップレベルの正面衝突50km/h、オフセット衝突64km/hをクリアし、前席エアバッグに前席3点式ロードリミッター付きプリテンショナーシートベルトを標準化し、ABS&ブレーキアシストをオプションとするなど安全装備は充実していたのである。これを受けてダイハツの安全技術の責任者だった瀬尾役員もオフセット対応すると私とのインタビューで明らかにしていた。

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