クルマとしての完成度はいいが派手さが足りない
今回はタイ仕様のWR-Vの実車チェックを行った。
見た目の質感はホンダ車でもあるので、いまさら問題にするようなレベルではなく、仕上がりもよい。ダッシュボードはこのクラスなので硬質樹脂なのは仕方ないとしても、助手席側のグローブボックス上あたりに合成皮革が張られており、質感をよりよく見せようとしている。
新興国向けモデルのためもあるのか、アナログメーターを基本とした計器盤となっているが、タイ仕様のヤリスクロスはすでに改良後モデルとなったこともあってフルデジタルディスプレイ表示されるところでは、ライバルに差を付けられているように見える。
車内空間はとくに狭いということもなく、シートもたっぷりとしていた。ラゲッジルームは底が深く積載容量など実用性でも申し分のないレベルとなっていた。
クルマとしての機能に不満点はないものの、ヤリスクロスと比較するとエンタテインメントというか、演出がやや地味に見えてしまう印象を受けた。やはり、ヤリスクロスというよりは、ライズに近いキャラクターなのかもしれないが、ライズはすでに事実上終売といっていい状態となっているし、そもそも5ナンバーサイズというところで人気が高いように見えるので、直接的なライバルともいえないような気がする。
日本仕様だけが5ナンバーサイズになるようなことはないだろうから、WR-Vの国内販売ではそれがネックとなる可能性は高い。それと、ハイブリッドユニット搭載車や4WDも日本仕様だけ専用設定するということは考えられないので、ラインアップを絞り込みすぎている点も気になるところである。
「3ナンバーならば」と、当然ヤリスクロスが購入候補として視界に入ってくる。ヤリスクロスはHEV(ハイブリッド車)も4WDもラインアップしている。それほどカツカツした予算繰りで購入検討しているとうわけでもない、セミリタイヤやリタイヤ層によるダウンサイズニーズも目立つクラスだけに、そのままヤリスクロスに流れてしまうことも十分ありうる話だ。
WR-Vだけではなく、WR-Vをフックにして他メーカー車へ逃がさずにヴェゼルヘうまくお客を誘導することができれば、ホンダにとっては十分使える“ツール”になるだろう。ただ、そのまま軽自動車のN-BOX(4WDがある)へ流れてしまうほうが可能性としては高いので、その点は要注意が必要といえるだろう。