日本で販売されていないモデルも多い
そして、CR-Vの弟分的な存在として、アジア市場に向けて2015年12月に発売が開始されたのが「BR-V」だ。Bold Runabout Vehicleの頭文字から名付けられたBR-Vは、全長4490mmという全長に3列シートを備えていた。
この初代BR-Vは1.5リッター直列4気筒SOHCを搭載し、駆動方式はFFのみ。SUVというより、路面状況が整備されていないような場所でも大人数乗車を可能とした、ミニバン的な要素が与えられたクロスオーバー車だ。
初代BR-Vは求めやすい車両価格設定もあって人気を集め、2021年には2世代目へとフルモデルチェンジして現在も販売中。現行BR-Vは、インドネシア工場で生産が行われて周辺のアジア諸国へと輸出が行われている。
一方の「WR-V」も、初めてその車名が公開されたのは2016年のこと。自動車の所有率が急速に増えている南米市場やインド市場に向けて開発されたモデルで、3代目GK世代のフィットをベースに車高を上げ、樹脂製のフェンダーモールなどでSUV風味に仕立てていた。
この初代WR-Vは、ブラジルとインドの2拠点で生産が行われたものの、残念ながら南米市場向け仕様は2022年で販売を終了。インドでは実質的な後継モデルとして「エレベイト」が開発され、インド国内にて生産・販売が続けられている。そして、このエレベイトが日本国内でWR-Vを名乗るのは前述のとおりだ。
では、WR-Vは日本国内専用の車名となってしまったのかというとさにあらず。じつは2022年11月にインドネシアで現行モデルが世界初公開され、翌月よりインドネシア国内にて生産・販売が開始されている。インドネシアではCR-V、HR-V(日本名ヴェゼル)、BR-Vがラインアップされているが、エントリーモデルに位置付けられるのがWR-Vだ。
エンジンは1.5リッターのDOHC i-VTECで、駆動方式はFFのみ。CVT以外にも6速MTを搭載したスポーティグレード「RS」が設定されるなど、若年層を中心に人気を集めており、2023年からはタイやマレーシアへも輸出が行われている。
日本国内でも販売されている「ZR-V」は、2023年に登場。1.5リッターターボと2リッター e:HEVという2種類のパワートレインが与えられ、e-HEVモデルが欧州市場でも販売されている。
シャシーの基本設計をFL型シビックと共有しているため、ヴェゼル(欧州名HR-V)と比べると車格はひとまわり大きくなっており、そのため大柄なクルマが好まれる北米市場においては、このZR-Vが三代目HR-Vとして発売されている。
マイナーなところでは、中国国内専用車として「XR-V」も存在する。ホンダの合併会社である東風本田汽車が生産・販売を行っている都市型SUVで、日本名ヴェゼルをベースに専用の外装デザインが与えられたもの。初代モデルは2014年に登場し、2022年にはヴェゼルのフルモデルチェンジに合わせて2世代目へと進化している。
長々と書き連ねてしまったが、ホンダがこれまで発表してきた「●R-V」シリーズは、ABC順でいうとBR-V/CR-V/FR-V/HR-V/WR-V/XR-V/ZR-Vの計7モデル。他社の車名で使用されたYも含めると、アルファベット全26文字のうち8文字がすでに使用されている。
現在の世界的なSUVブームを考えると、今後も同シリーズは拡大していくと思われるが、はたして次に登場する車名はなんだろうか。コンパクトSUVのAR-V、あるいは中・大型SUVではMR-VやQR-Vあたりが確率高そうな気がするが……。楽しみに待ちたい。