この記事をまとめると
■トラックドライバーだけでなくタクシーやバスの運転手も減少している
■バスドライバーの平均給与がそれほど高くないのも減少傾向を増長している理由のひとつだ
■路線バスはワンマン運行が多く低賃金なうえひとりでトラブルの対応をしないといけない
ドライバー不足の裏側にある課題
2024年問題は物流のトラック輸送だけでなく、日々の足となる路線バスでも起ころうとしている。すでに全国で路線バスの廃止や減便がはじまっている。その数はおおよそ8割にのぼる。人口の少ない地域だけでなく、都市部も例外ではない。
最大の要因は、バス運転士の給与の安さだとされる。2022年の所得額は400万円を切っているとの調査結果がある。月額にすると33万円ほどであり、家賃を払い家族を養うとなれば、決して楽な収入ではないだろう。それでいながら、路線バスはトラックと違った責任があり、乗客の安全を担いながら移動を約束する仕事で、かつほとんどがワンマンでこなさなければならない。
かつて、昭和30年代は路線バスにも車掌が乗務し、運転士とふたりでの運行だった。それが人口減少や乗客の減少などにより、運転士がすべてをこなすワンマンバスへ転換されていった。いまから60年も前から、課題を持ちながら路線バスは運営されてきたのである。
一方、同じ路線を都バスや市バスと私鉄バスが並行して走っていたこともあり、統合するなどの話し合いがようやく持たれる時代となった。それでも、老若男女、所得もさまざまな人々の足として、乗車運賃をそれほど高くすることもできず、厳しい経営が続いてきたといえる。
※画像はイメージ
そうしたなか、働き方改革の一環として運転士の残業時間の制約が実施されれば、より多くの運転士を抱えなければ減便といった措置は不可避となり、それによって不便になれば、乗客離れが進むという悪循環に陥る懸念がある。
少子化などの人口減少とともに、路線バスの運転士が集まりにくい背景には、乗客への対応もあるようだ。急発進をしたとか、運転の仕方が粗いとか、前のクルマとの車間距離が近いなどといった苦情が乗客から寄せられる。そうした実態も事実あるかもしれないが、危険の感じ方は人それぞれで違う。また、高齢者と若年層では、同じ加速をしても支障のあるなしは分かれるだろう。タクシーであれば、必ず乗客は座席に座るが、路線バスは立って乗る人もいる。走行の仕方がさまざまな影響を及ぼすことになる。
乗客からのそうした声に、バス会社が丁寧に説明する事例もあるようだが、運転士がひとりで孤軍奮闘しなければならない場面も現実問題少なくない。安全運転と定時での運航が求められるバスの運転士に、さらに乗客からの批判が集中し、かつ給与が十分でないとすれば、路線バスの運転士になろうとする意欲は高まらないだろう。
一方で、公共交通機関は、個別のクルマでの移動に比べはるかに二酸化炭素の排出量を減らす効果が大きい。運転支援の進化と合わせ、自動化の適応や、改めてバスの走行を優先する路線の検証など、運転士が働きやすい交通環境や車両の進化を含めた未来像の提案と検証が求められているのではないか。
韓国では、夜間に限って自動運転バスの実証が始まっている。自動運転の実用化は、乗用のみならず、商用のトラックやバスで、より切実に求められることになるかもしれない。