追加グレードのSUVテイストなモデルが主役に躍り出る勢い
フルモデルチェンジではなく、クロスオーバー&SUVテイストのグレード追加で成功した例が、ホンダのフィットとフリードだ。現行モデルの4代目フィットは、大人しすぎるエクステリアデザインから、たとえばヤリスやノートと比べ、見た目の商品性から、先代以前にあった勢いを失っている。
しかし、筆者の個人的印象では、クロスターこそもっともカッコいい、商品力あるフィット、フリードだと思っている。極論すれば、クロスターをフィットの主役に据えれば、もっと売れているんじゃないか……ということだ。
そうそう、軽自動車の世界でも、クロスオーバー&SUVテイストあるグレード追加が販売台数の押し上げにつながっている。
たとえばスズキ・スペーシア。いまでは、見かけるスペーシアの多くがスペーシア・ギアと呼ばれるクロスオーバーグレード(と軽商用車のスペーシア ベース)。デリカミニ4WDのような本格的な走破性を備えているわけではないのだが、そのクロスオーバー感あるエクステリアデザインが、いまの時代によりマッチしているのだろう。
輸入車も、フルモデルチェンジでクロスオーバー&SUV化し、その人気を高めているモデルが数多い。たとえばフランス車。シトロエンC3にしても、3代目のエクステリアはいきなりクロスオーバーテイストになって注目度を高めているし、プジョー5008は初代のワゴンタイプから、2代目の現行モデルではSUVスタイルに大変身。欧州ではもちろん、日本におけるプジョー人気に拍車をかけたモデルとなっている。
2020年にはCROSSCITYという悪路走破性を高めた特別仕様車も発売されるなど、駆動方式はFFながら、都会からアウトドアフィールドまでが似合う1台として、プジョーブームをけん引している。
フルモデルチェンジというより、グレード追加で車種全体の人気を高めた1台が、MINIクロスオーバーだ。本家のMINI、MINIクーパーの過去から現在に至る人気もさることながら、MINIの存在感を世界的にさらに高めたのがクロスオーバーモデルであり、MMINI全体に占める販売台数の割合は、いまや全世界で約30%、日本でも約25%を占めるほど。
というわけで、クラウン・クロスオーバーやルノー・エスパス(以前はミニバン、新型は3列シートSUVに大変身)の例に漏れず、今後出てくる新型車が、それまでのボディタイプを一新し、クロスオーバー&SUVテイストで登場する例が、しばらくは続くかも知れない。
アルファードにやられっぱなしの日産エルグランドも、ジャパンモビリティショー2023に展示していたコンセプトモデルのハイパーツアラーではなく、アルファードとかぶらないハイパークロスオーバー3列シート×e-POWER×e-4ORCEモデルとして次期型を企画したらどうだろう。三菱デリカD:5が独壇場のジャンルに切り込めるし、一躍、エルグランド史上最大のヒット作になるかも知れない……。