低価格なMRポルシェの914に911用エンジンを載っけたら911より高くなっちゃった! 幻に終わった「ポルシェ916」という残念なモデル (2/2ページ)

ポルシェが本気になったらやりすぎちゃった

 この914/6はその後、1972年にはVWタイプ4のエンジンをベースとする4気筒仕様の914 2.0にモデルチェンジされる。ここまでは、ポルシェのファンにはよく知られているとおりだ。

 だが、ポルシェ914には、そのほかにも派生モデルとして誕生したかもしれないプロジェクトがいくつか存在した。ここではそのなかから、「916」と呼ばれたモデルを紹介しよう。

 916は、それまでの914シリーズの成功を受けて、よりスポーティなミッドシップスポーツを生み出そうというコンセプトから開発が進められていったモデルである。その考えはきわめて自然なもので、ポルシェ914が1970年代に入ると、いずれも年間で2万台を超える販売台数を記録していたことを考えると、さらに高性能な914を市場に投じることで、その販売にさらなる加速度を生み出そうという狙いもよく理解できる。

 実際にポルシェが、1971年のパリサロンでの発表を狙って製作した916のプロトタイプは、トータルで10台とされるが、それらの内訳は911Sに使用された190馬力の2.4リッター空冷水平対向6気筒エンジン搭載車が3台、911RSに搭載された210馬力の空冷水平対向6気筒エンジンを移植したものが7台となっている。

 また、最終的には300馬力の3リッター8気筒ユニットを搭載した914/8も2台が製作されているのだから、ポルシェがいかに914というモデルの潜在的なパフォーマンスを高く評価していたのかは想像に難くない。

 だが、916以降の各モデルは、いずれも車両価格が911のベーシック価格を大きく上まわることになり、それを販売のルートに乗せることは難しかった。

 914シリーズの特徴であるタルガトップを廃し、よりスポーティなキャラクターに終始した916。市販に至らなかったプロトタイプであることを考えても、2020年にRMサザビーズがモントレー・オークションで記録した落札価格、95万7000ドル(当時の邦貨に換算して約1億125万円)は、十分に説得力のある数字だろう。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
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