ほとんどのメーカーは充電設備に直接関与していない
まず、充電設備についてだ。EV普及のためには、いわゆる「ニワトリが先か、タマゴが先か」というイメージとして、「充電設備が増えないからEVが普及しない、EVが普及しないから充電設備が増えない」との議論が長きに渡って続いてきた。
近年は、CEV補助金の対応業務を行なう、前述の次世代自動車振興センターが「V2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)充放電設備・外部給電器補助金」など、充電設備についても補助金を用意し、ユーザーのみならず充電設備関連事業者にとっても、充電設備拡充の追い風になっている状況だ。
ただし、こうした充電設備に対して、自動車メーカーは直接関与していない。自動車メーカーの基本方針としては、契約先の自動車販売事業者に対して、充電設備の設置を「お願いする」立場に過ぎない。自動車販売事業者の多くは、メーカーとは直接の資本関係のない地場企業だからだ。また、一部メーカーの場合、メーカーから直接資本の企業体系が多いが、それでも経営組織としては完全に分離していることを付け加えたい。
その上で、あくまでも自動車メーカーの業務は、製造と卸売りに特化しているのだ。そのため、販売店での充電設備の設置状況をメーカーのEV普及に対する貢献度として数値化することは極めて難しいはずだ。
また、故障に対する貢献度の算出といっても、EVに限らず車両の技術面での補償はどのモデルでも基本は同じ考え方であり、整備や点検の実務の良し悪しはメーカーではなく自動車販売会社が責任を追う。
EV補助金の算出方法の変更については、現時点ではまだ報道ベースの情報であり、詳細がわかった段階で、さらに踏み込んだ「補助金のあり方」に対する検証をしてみたい。
また、補足として、海外の事例について少しだけ触れる。国や地域でEVに関するさまざまな補助金算出の方法があるが、地域性や社会情勢によって日本の補助金制度と単純に比較できるとは思えない。
よく、日本のEV補助金との比較としてアメリカの事例が挙げられるが、アメリカの場合、IRA(インフレ抑制法)との関係が極めて深い。このIRAは実質的に、中国を念頭に置いた政治的な思惑が強い政策という見方が一般的であり、日本の自動車メーカーはIRAへの対応に苦慮しているところだ。
いずれにしても、日本における2024年度のEV補助金(主にCEV補助金)の詳細が公開されるのを待ちたい。