この記事をまとめると
■クルマのタイヤが脱輪してしまう原因をいくつか紹介
■主な原因はナットの緩みや締め過ぎ、ホイールバランスの悪さが原因となる
■適切な工具の使用や日常点検を欠かさず実施し、不安な場合はプロに任せるのが吉だ
ホイールの脱落は死亡事故になる場合も!
クルマを運転していると、不意にいろんな「ヒヤッ」とさせられる状況に遭うこともありますよね。
たとえば急ブレーキしてタイヤがロックしてしまい、フロントタイヤの接地感が失われて不安な感触を味わってしまったり、あるいは雨の日の濡れた路面や路面に載った砂などで後輪がスリップしてドキッとしてしまったりすることもあるでしょう。
でもそれらの状況は、よほど速度が乗っていなければ一瞬滑ってもまたタイヤのグリップが戻ってくれる可能性が高いので、車体がスピンして大事に至る、ということも滅多には起こらないでしょう。
ただそれもタイヤ(ホイール)があるからこその話です。
「えっ? タイヤが付いていないクルマなんてないじゃん」と思った人がほとんどだと思いますが、タイヤがパンクしてしまうとグリップが失われてしまいますし、ごく稀に、ホイールが脱落してホイールハブが丸見えになっているクルマを路肩で見かけることもあります。
個人的には事故にまで至ってしまったケースに遭遇したことはありませんが、「ホイール脱落」などのワードでWebを検索すると、トラックの脱落のケースや脱落したホイールがほかのクルマや歩行者に被害を与えてしまった例などが出てくることと思います。
おそらくほとんどのドライバーは脱落を経験したり目撃したりということはないと思いますが、いざ起きてしまうと車体のコントロールは桁違いに失われてしまい、自車ばかりでなく周囲に深刻な被害をもたらしてしまう恐れがあります。
ここではそんな深刻な被害をもたらす可能性のあるホイール脱落の原因について掘り下げてみましょう。万が一にもそんな目に遭遇しないように備えるための知識を蓄えていただく助けになればと思います。
■ホイールナットが緩んでしまった
おそらくホイール脱落の原因としてはこのケースがいちばん多いのではないでしょうか。
乗用車の場合、ホイールナットは4つまたは5つ(6つの場合もあり)で1本のホイールを固定しています。ホイール交換の際にホイールナットの締め忘れまたは締め付けが甘かったりして、そのうちのひとつが緩んでしまうというケースです。
緩んだのがひとつなら、まだほかの3つ(もしくは4つか5つ)で固定されているのですぐに外れるということはありません。しかし、車両が走行しているとき、ホイールは車重の4分の1を支えながら、ブレーキの縦の荷重とコーナーリングの横の荷重、路面ギャップを乗り越えるショックなどに耐えながら回転しています。
4穴の場合、正常なときは正方形で支えていたところが、ひとつ欠けることで中心がズレた三角形になります。このズレによって応力が偏ってしまい、大げさにいうとホイールの接触面が浮いてカパカパした状態で回転することになります。
これが振動となってナットを徐々に緩ませてしまう原因となります。最初はひとつだけだったのが、だんだん2つ3つと緩む本数が増え、最終的にはホイールが脱落してしまいます。
ホイールナットは適正トルクでしっかり締め付けましょう。
■ハブボルトの破損
上の緩むケースとは逆に、ホイールナットを締め付け過ぎても危険です。
ホイールナットの脱着には十字レンチがよく使われていると思います。この使い方によっては明らかに締め付けがオーバートルクになってしまう場合があります。
中腰になり、両手を使って軽く体重をかけて締め込むのがセオリーなのですが、「緩んで欲しくない」という意識が勝ってしまい、フルパワーで締め込んでしまう人もいます。それだけならまだしも、非力さを補うためにレンチに足で載って全体重をかけている人もごく稀にいるようです。
たしかにハブボルトは太い金属の棒のようなものなので、直接体重をかけたとしても折れるようなことはないでしょう。しかし、ネジの力を甘く見てはいけません。
ネジというのは、見方を変えるとテコの原理の応用なんです。テコの原理というのは少ない力でも大きなストロークで動かすと、作用点で大きな力がかけられるというものです。ナットを締め付けるというのは、レンチにかかる数倍〜数十倍もの力でボルトを引っ張っている行為です。腕でまわすのが適正なケースで、体重を乗せてその何倍かの力をかけてしまうと、さすがのボルトも伸びてしまうんです。
金属はある程度までなら耐えますが、限界を超えて変形させられると元に戻れなくなってしまいます。それに気付かずに同じ行為を何度も繰り返すと、最終的にはボルトの限界を超え、破断してしまうのです。