「インディ」「ミッレミリア」「マン島TT」なども車名になってた
1969年のジュネーブショーで発表されたマセラティのインディは、想像のとおりインディアナポリス500マイルレースを、1939年と1940年の2年連続で優勝したことを記念してネーミングされたミディアムクラスのモデル。
新たにV型8気筒エンジンを搭載し、4人乗車を可能にするなど、高性能なGT=グランツーリスモとして、またスーパーカーとしても人気を集めていた。
メルセデス・ベンツのSLRマクラーレンにも、じつはレースと関連するサブネームを掲げたモデルがあった。それは2006年のパリサロンで発表された「722エディション」だ。
150台の限定車としての登場となったこのモデルに示される722の数字は、1955年のミッレミリアでメルセデス・ベンツ300SLRがゼッケンナンバーとしてそれを掲げ、かのスターリング・モスのドライブによってレースを制したときのもの。同時にそれはこのときのスタート時刻でもあったことはファンにはお馴染みだ。
搭載される5.4リッターのV型8気筒スーパーチャージャー付きエンジンは、スタンダードなSLRマクラーレンから、さらに24馬力のエクストラを得て650馬力仕様に、車重も44kgのダイエットを果たした722エディション。一連のSLRマクラーレン・シリーズのなかではもっともハードコアな性格を持つ1台だ。
先日、生産中止が発表されたことで惜しまれるアウディの「TT」も、その車名はレースに関連している。
TTとはイギリスのマン島で開催されているバイクレース、「ツーリスト・トロフィ」の略で、なぜそれがアウディの車名に採用されたのかというと、じつはアウディの前身のひとつであるNSUは、自動車のみならずバイクの生産にも積極的で、その性能を誇示するために、1950年代を中心にこのツーリスト・トロフィに参戦。何回もの優勝を飾っていたからなのだ。
実際、最初にTTの車名が与えられたモデルはNSU時代で、1998年に発表され、そこから3世代にわたって進化した、いわば現代のTTは、それに続くものとなるというのが正確な歴史の流れである。
自動車のプロモーションとモータースポーツは切っても切り離せないもの。さらにそれが世界最高峰のレースにおける頂点を極めたものだったとしたのならば。その策はまさに自然な成り行きともいえるものなのだろう。