じつはやりたくてもできない!? 新型N-BOXがこのご時世に「ハイブリッド化」しなかったワケ (2/2ページ)

居住区間を考えるとハイブリッド化に踏み切るのは難しい

 実際、ライバルモデルと比べてみても、マイルドハイブリッドシステムを採用する日産ルークスのNAエンジンFF車のWLTCモード燃費は20.9km/Lとなっており、非ハイブリッドのN-BOXに及ばない。ホンダの言い分も納得である。

 N-BOXをキャッチアップすべくフルモデルチェンジしたスズキ・スペーシアも、独自のマイルドハイブリッドテクノロジーを採用している。こちらのWLTCモード燃費はNAエンジンFF車で23.9~25.1km/L。N-BOXを大きく上まわっている。実際、公道で試乗した際にメーター読みで確認したリアル燃費においても、スペーシアはN-BOXに対して1割程度のアドバンテージを持っていることが確認できた。

 なので、優れた燃費性能を理由にしていたホンダのエンジニアも、「いつまでもハイブリッド不要」とはいえないかもしれない。

 ただし、現在のアーキテクチャーによるN-BOXに、日産やスズキのようなマイルドハイブリッドシステムを搭載するのは物理的に難しい面もある。

 これら軽自動車に普及しているマイルドハイブリッドシステムというのは、ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)と呼ばれる小型モーターを、エンジンのクランクシャフトとベルトでつなぐ補機として設置するというのが基本構成。エンジン再始動や発進・加速時のアシストを行うという仕組みになっている。

 ISGについては通常のジェネレーターとさほど変わらないサイズのため、N-BOXのエンジンにも装着することは可能だろうが、課題といえるのが減速エネルギーなどで充電、モーターアシストの電力供給を担うハイブリッド用バッテリーの配置だ。日産、スズキとも小型のリチウムイオン電池を助手席下のスペースに収めている。

 しかし、N-BOXにおいては、この場所には燃料タンクが存在している。このセンタータンクレイアウトによるパッケージの優位性は、すなわちN-BOXの後席やラゲッジスペースの使い勝手のよさにつながっている。

 もしN-BOXにライバルモデルと同じようなマイルドハイブリッドシステムを搭載するとなれば、ハイブリッド用バッテリーを後席もしくはラゲッジスペースに置く必要がある。

 それはN-BOXのメリットを大きく損なってしまうのは自明で、こうした部分もホンダが現行N-BOXのアーキテクチャーにおいてマイルドハイブリッドの採用を否定的に捉えている理由といえるのだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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