ヤリスはめちゃくちゃ小まわりが効くけれど……
ところで、れっきとしたコンパクトカーで、小まわり性に優れたクルマとして、トヨタ・ヤリスがある。最小回転半径はタイヤサイズによって4.8~5.1mと、軽自動車並みの小まわりのしやすさを示す。
が、テレビでも放映されたラリージャパン2023で、トヨタ・ヤリスの表彰台独占、トラブルから驚異的な走りで5位にまで順位を上げた勝田選手の活躍を見て、「モータースポーツ用の車両を市販化する」という発想で開発されたGRヤリスを買うぞ!! と息巻いている人は要注意。とくにモータースポーツ参戦のベース車でカスタマイズ前提、かつもっとも本気なGRヤリスRCを買ってしまうと、最小回転半径はRZの5.3m、RSの5.2mに対して、一気に6.0mになってしまうのだ。
最小回転半径6.0mと言えば、レクサスLX、LS、メルセデス・ベンツVクラスと同じなのだから、大変である。ラリーカ―として改造するのでなく、一般使用でGRヤリス気分を味わうためだけに買うなら、日常でも使いやすいRZ、RSで決まりである。
では、輸入車はどうだろう。小粒でピリリにして、最小回転半径が大きく小まわりが効かない……と話題!? な1台がアバルト595だ。全長3.6m程度、全幅1.6m程度にして、最小回転半径は5.4m。5.4m自体は、すでに説明したように、小まわりの効く部類なのだが、ボディサイズからすると、びっくりの小まわり性の悪さということになる。ちなみに最小回転半径は5.4mのクルマといえば、メルセデス・ベンツのEクラス相当である。
最近、ジワジワと人気が出ている、国産車とは違うオシャレ度あるフレンチMPV、両側スライドドアを持つユーテリティカーがプジョー・リフター、シトロエン・ベルランゴだ。ベッドキットなどのオプションも揃い、アウトドア、車中泊派にもうってつけの注目車。標準ホイールベースモデルの最小回転半径は5.6mとまずまずで、実際、小まわりしにくいとは感じられないのだが、あとから加わった7人乗り、3列シートの「ロング」は、ホイールベース190mmの延長によって最小回転半径は5.8mとなり、先代トヨタ・アルファードの5.8mと同じ(新型は5.9m!)。アウトドアフィールドを目指し、山のなかの狭い道に迷い込み、Uターン……なんていうシーンでは困ってしまうかもしれない。
広々とした土地に住み、駐車スペースに余裕があり、比較的狭くない道だけを走るのであれば、最小回転半径はそれほど気にしなくてもいいが、そうでなく、扱いやすく、小まわりが効き、Uターンや駐車のしやすさを重視したクルマ選びをするのであれば、ボディサイズとともに、最小回転半径の小ささ、小まわり性の良さは、クルマ選びのひとつのポイントになるだろう。