今すぐレベル3搭載車を乗用車で拡大していくのは現実的ではない
また、国内初の自動運転レベル3は、けっしてホンダ1社の企業努力で実現できたのではないことも十分に承知している。2014年から続いた産学官連携による国家プロジェクトにおける、多様な分野での実績があってこそ、レジェンドの自動運転レベル3が世に出たのだと思う。
この国家プロジェクトは、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)という。内閣府が中心となり、日本の産業競争力強化を進めるもので、そのひとつに自動運転があった。関係各省庁、自動車メーカー、自動車部品メーカー、大学等の研究機関、さらにベンチャー企業など、いわゆるオールジャパン体制で次世代技術の量産化を目指し、第一期と第二期あわせて9年半にわたり実施された大規模プロジェクトである。
SIPの自動運転プログラムを総括した責任者は「SIPの初期、日本は欧米に対して、周回遅れだった」と当時を振り返った。周回遅れとは、法的な面や技術開発など、自動運転の社会実装に必須のことのほぼすべてに対する言葉だ。
それが、9年半の関係者の皆さんの激務を経て、道路交通法や道路運送車両法の改正や、国際協調、そして人材育成などにおいて日本は自動運転分野で大きな成果を挙げた。
SIPを通じて自動運転にかかわる多くの人が、自動運転における「現実解」を痛感したとも言えるだろう。
つまり、バスやタクシーなどの公共交通機関では、近い将来にドライバーレスの自動運転レベル4の社会実装の可能性があること。一方で、乗用車については、コスト面と実用面で、当面は自動運転レベル2をさらに高度化させることを重視し、その一部で自動運転レベル3も実現し得るという見方だ。
こうしたことから、レジェンドで先行した自動運転レベル3については、現時点(2023年12月)では、それにすぐに追従する動きがない。