マイルドハイブリッド搭載で燃費はクラストップレベル!
次は走りをチェックする。標準ボディのハイブリッドXが搭載するノーマルエンジンは、スーパーハイトワゴンでは平均的な動力性能だ。2000〜3500回転の駆動力をもう少し高めると良いが、4000回転を超えると吹き上がりも活発になる。平坦路であればパワー不足を感じにくい。
ステアリング操作に対する車両の反応は、高重心のスーパーハイトワゴンとしては鈍さを感じさせず自然な印象だ。峠道などを走るとボディの傾き方が拡大するが、挙動の変化は穏やかで唐突感もない。そのために安心して運転できる。下り坂のカーブを曲がるときなどは、後輪の接地性が高く、走行安定性も優れている。全高を1700mm以下に抑えたワゴンRのような感覚で運転できた。
乗り心地は、突き上げる粗さはないが少し硬い。燃費向上のために転がり抵抗を抑えた14インチタイヤを装着して、同じく燃費を重視して前後輪の指定空気圧を240kPaに高めたことが影響を与えていると見ている。購入前の試乗では、街なかの舗装が荒れた場所を時速40km以下で走り、乗り心地を確認したい。
一方のカスタムは、ハイブリッドXSターボを試乗した。ターボでは、運転感覚に大きな影響を与える最大トルクが、ノーマルエンジンの5.9kgmから1.7倍の10kgmに向上する。発進直後の2000回転付近からターボの過給効果が感じられ、3000回転を超えると加速も力強くなる。1リッターエンジンを搭載するような感覚で運転できた。
開発者は「足まわりの設定は標準ボディと同じ」と言うが、タイヤサイズはノーマルエンジンが14インチ、XSターボは15インチだ。XSターボではタイヤの性能が向上して、峠道のカーブでも、外側に位置する前輪が路面を確実にグリップする。ボディの傾き方など、基本的な挙動は標準ボディと同じだが、曲がる性能を高めた。15インチタイヤの装着で、乗り心地も影響を受けた。硬めではあるが、重厚感が伴って、14インチの標準ボディに比べると違和感が薄れた。上質に感じる。
装備では安全面を向上させた。衝突被害軽減ブレーキは、自車が右左折するときでも、直進車両や横断歩道上の歩行者を検知して作動する。サイド&カーテンエアバッグも全車に標準装着した。
スペーシアではWLTCモード燃費にも注目したい。2WDの場合、ノーマルエンジンの数値は、ハイブリッドXなどの売れ筋グレードが23.9km/Lで、ベーシックなハイブリッドGは25.1km/Lに達する。ハイブリッドXSターボでも21.9km/Lと良好だ。スペーシアのターボの燃費は、ほかのスーパーハイトワゴンのノーマルエンジンと同程度になる。また、先代スペーシアXのWLTCモード燃費は21.2km/Lだったから、新型に乗り替えると、数値上はガソリン代を11%節約できる。
機能や装備の割に価格を安く抑えた買い得グレードは、試乗したハイブリッドX(170万5000円)だ。ハイブリッドGに比べると、両側スライドドアの電動機能、マルチユースフラップ、スリムサーキュレーター、チルトステアリングなど、26万円相当の装備を加えて、価格アップを17万4900円に抑えた。
カスタムでは、まずハイブリッドXS(199万5400円)を検討する。標準ボディのXよりも29万400円高いが、車間距離を自動制御できるクルーズコントロール、エアロパーツ、アルミホイール、ステアリングヒーターなど、価格差に見合う装備を加えている。
ただし、カスタムの場合は、ハイブリッドXSターボ(207万3500円)も検討したい。前述のとおり最大トルクがノーマルエンジンの1.7倍に増えて運転感覚を向上させ、WLTCモード燃費は8%しか悪化しない。価格はノーマルエンジンのハイブリッドXSに比べて7万8100円高いが、パドルシフトやパワーモードも加わり、ターボの正味価格は6万5000円に収まる。高効率なターボが割安に搭載される。
以上のようにスペーシアは、適度に機敏な運転感覚によって街なかを走りやすく、豊富な収納設備やトレイを採用して日常的な実用性も高めた。安全性も向上させ、燃費はスーパーハイトワゴンのナンバーワンだ。毎日の生活で使いやすく、経済性も優れている。買い得グレードは標準ボディのハイブリッドX、個性派グレードはカスタムハイブリッドXSターボとなる。販売店に納期を尋ねると「2カ月から3カ月」だから、購入しやすいことも魅力になる。