ルノー・スポールがアルピーヌに変わっても本質は何も変わらない
そんなウイルスにとっくに感染しているオーナーたちのため、スポーツ走行枠はサーキットを何度も走っている経験者向け、あるいはこれから腕を磨きたい経験浅めオーナーのための初心者向け、という2グループに分けられていた。
ルーテシア3、4のR.S.や歴代のメガーヌR.S.、トゥインゴ・ゴルディーニのようないまや懐かしい顔ぶれに、現行のA110はもちろんオリジナルのA110まで、新旧のルノー・スポールが一斉に走っている様は、本気は本気なのだが、ベースが実用ハッチバックだったりするだけに、ちょっとコミカルでもある。
同時に、パドック内の特設ステージでは、ルノー・ジャポン社長の小川隼平さんとモータージャーナリストの今井優杏さんが司会進行を担当。先のメリメ氏&ウルゴン氏のトークショーが繰り広げられた。「公道を走るモデルである以上、どのルノー・スポール車も開発で一般道を走り込んできたが、欧州だけでなく日本の道を走り込んだことはとくに印象深かった」とのこと。というのも、意外と平滑な舗装ばかりでもなく、パッチワーク状態なのだそうで、乗り心地の改善に活かす基になったたという。
他にもパドックでは、メガーヌR.S.で袖ヶ浦を走ってみるシミュレーターや、最終モデルとなるメガーヌR.S.ウルティムの展示、購入相談コーナーが設けられ、盛況だった。
また、日本のアルピーヌ&ルノー・スポール黎明期の立役者として、フランス本国でも有名なハンガー・エイトの藤井照久氏が、ルノー・エスタフェのキッチンカーでジビエのシチューをランチに提供していた。底冷えするほどの寒さに見舞われた日だけに、来場者やスタッフに大好評だった。
薄暗くなり始めたコース上で、最後に行われたのはオール・ルノー車によるパレードラン。パレードの出発前に、参加車両すべてをバックに、メリメ氏とウルゴン氏が横断幕を掲げて記念撮影を行った。彼らは機会ある度、日本を訪れてはルノー・スポールの超・実践的な草の根モータースポーツを広めてきた。日本市場は世界でも本国に次いで2~3位を常に争うほど、指折りのルノー・スポール消費国となった。
ルノー・スポールという看板は下ろされ、アルピーヌに統合されることはグループの既定路線として発表されているが、その幕を極東まで引きに来た、そんな感慨が押し寄せてきた。ただ、アルピーヌの次世代EV版やその他のニューモデル開発の中心にいるのも、このふたりだったりするのだが。
「次世代がEVになることは確実。正直いって、最初はEVでスポーツカーなんて無理! と思っていたけど、内燃機関とは違う面白さのあるクルマにできると考えるようになってきた」と、ふたりとも異口同音に述べる。アルピーヌがA110だけでなく、ハッチバックやクロスオーバーSUV、ポルシェ・パナメーラのようなスポーツサルーンにまで食指を伸ばしているのは、ルノー・スポールから順当に進むべき次章でもある。
そんなルノー・スポールだって、元はアルピーヌとゴルディーニを母体に始まった。だから将来的にいまのルノー・スポールと同じぐらいおもしろいクルマに乗れるのか? というのは、アルピーヌへの変身が原点回帰でもある以上、杞憂に終わるはず。そう断言できる強いメッセージを、あのふたりは袖ヶ浦まで伝えに来たのだ。