身につけるものやアイテム利用で上手に放電して静電気を防ぐ
■静電気の対策を考えてみよう
静電気の対策には大きくわけてふたつあります。ひとつは静電気を発生させないように工夫すること。もうひとつは静電気を地面や周囲に流してしまうことです。それぞれの対策方法を見ていきましょう。
○服の素材を考える〈発生を抑える〉
服の素材には、帯電しやすいものとそうでないものがあり、さらにマイナスに帯電しやすいものとプラスに帯電しやすいものにわかれています。
◆帯電しにくい素材・・・綿や麻、絹などのおもに植物由来の素材。逆に動物由来や化学繊維は帯電しやすい
◆マイナスに帯電する素材・・・アクリル、ポリエステル、ポリウレタン、アセテートなど
◆プラスに帯電する素材・・・ナイロン、ウール、レーヨン
前述のように、マイナスに帯電する素材とプラスに帯電する素材がこすれ合うと静電気が発生しやすいため、たとえばウールのニットを着ていて、その上にアクリル素材の上着を羽織っているような場合は、動くだけで静電気を発生させるのでかなり注意が必要です。上着を脱ぐときに盛大に静電気のフワッとした感触に包まれ、細かくパチパチいっているのが想像できます。きっとその状態で外を歩いてクルマに触れたら、けっこう激しい「バチッ」が待ち受けているのではないでしょうか。
静電気を発生させないようにするには、まずは綿や麻などの帯電しにくい素材を選ぶことです。肌に触れるインナーウェアにこれらの素材を着用すれば、静電気対策のベースが整っている状態と言えるでしょう。
また、プラスならプラス同士、マイナスならマイナス同士の素材を組み合わせると、異なる極性の組み合わせのときよりも静電気の発生をグッと抑えられます。
出先で触れる物の静電気の帯電具合を調べることは難しいので、まずは自分自身が帯電しにくい状態で行動できるように気を配ってみましょう。まずは着ていく服の素材が何でできているか、タグを見て確認するところから始めるといいのではないでしょうか。
○靴の素材を考える〈周囲に流す〉
電子工作や電気工事の分野では「接地」のことを「アース」と呼びます。地面は電気を良く流す導体で、しかも質量が膨大なため、たとえ雷レベルの強大な静電気も軽く受け止めて中和します。
人間の場合は、足もとが地面と接する部分になるので、帯電したとしても、地面と接していればアースされるので帯電は解消されます。ただし、それは間に絶縁体がない場合の話です。靴のソールの多くはゴムやラテックスなどの絶縁性の高い素材が使われているので、身体に溜まった静電気が上手くアースできないんです。
対策は導電性の素材がソールに使われている靴を選ぶことです。ポリウレタンやEVAなどは導電性があるようで、静電気防止シューズなどはそういう導電性の素材を活用しています。また、革も導電性の素材なので効果があるようです。
○肌のうるおいをいつもリッチな状態にしておく〈周囲に流す〉
空気が乾燥する時期に静電気が発生しやすいのは、身体に帯電した静電気が皮膚の表面から放電しにくくなるためです。湿度が高い状態では導電性の高い水分が空中に多く漂っているので、身体から発生する静電気が常に放電されいる状態になり帯電しにくいのですが、空気が乾燥してくると水分が少なくなるため、身体から放電がおこなわれなくなってしまい、静電気を帯びやすくなるのです。
なので単純な話ですが、放電するための皮膚の表面に水分をまとわせてやればいいということになります。女性なら肌の保湿にかなり気を使っていることと思いますが、男性の場合も静電気対策のためには、保湿クリームや化粧水などを使っていつもしっとり肌をキープするというのは有効な手段と言えるでしょう。その際は手や顔だけでなく、腕や脚など見えないところの保湿が効くということも覚えておきましょう。
○放電グッズを使ってみる〈周囲に流す〉
・放電ブレスレット
けっこう古くからある静電気対策グッズがブレスレットタイプのアイテムです。基本的な仕組みは、伝導性の高い素材を使って、静電気をブレスレット部から大気に放出させてやろうということのようですね。放電する面積が少ないのでやや頼りない感じはありますが、カサカサになって導電性が失われた皮膚の代わりに放電してくれるのなら意味はありそうです。
・放電スプレー〈周囲に流す〉
昨今、少し話題になっているアイテムがこのスプレータイプのアイテムです。原理は導電性の高い水を衣類に吹きかけることで大気に静電気を放出させようということのようで、すぐに蒸発してしまわないように、グリセリンなどを配合しているのがポイントですね。
常に身につけていないでも済む手軽さと、施工する対象を選ばないのも魅力のポイントなのでしょう。
・静電気除去シート&キーホルダー〈周囲に流す〉
自宅やクルマのドアノブの脇に貼り付けて、パッドに触れることで静電気を逃がしてくれるアイテムです。同じ導電性の素材ならドアノブも同じではないか? と思いますが、こちらは同じ導電性でもゆっくりと電気を流す素材とのことで、放電は行うけど「バチッ」っといわないよ、ということのようです。ドアノブに触れる前に使うキーホルダータイプも原理は同じですね。
ちなみにセルフのガソリンスタンドの放電パッドはまた別の仕組みです。あれはしっかりと地面にアースされているので、効果はカンペキでしょう。
あとがき
紹介した方法以外にも、帯電の状態を確認できるセンサー(業務用)や、帯電をLEDの点灯で教えてくれるライトなどがあり、物に触れる前に帯電しているかを確認しておくことで、放電してから物に触れるように対策することができるというのもあります。
また、かなり原始的で衛生的にも疑問はありますが、ドアノブに触れる前に地面に触れるという方法も有効です。地面が土ならカンペキですが、コンクリートやアスファルトは前出の放電パッドと同様にゆっくり電気を流すので「バチッ」のショックは防げます。