この記事をまとめると
■かつてガソリンスタンドにて「水抜き剤」を勧められることが多かった
■昔のクルマはガソリンタンクが金属製であったので錆びることがあった
■いまのクルマのガソリンタンクはほとんど樹脂製で錆びる心配がないため必要性が減った
昔よく耳にした「水抜き剤」とはなんだったのか
その昔はガソリンスタンドで「ッショニミズンキザァーイカァースカァー(訳:一緒に水抜き剤などいかがでしょうか?)」なんて、バイトのニーチャンからしょっちゅう声をかけられていたものですが、気がつけばそんなやりとりも久しくお目にかかっていません。
昨今はセルフのスタンドが主流になってきているため、スタンドの店員と話す機会自体がほどんどなくなってしまいましたので、水抜き剤がどうのという話ではなくなってしまったのですが、じつはトイレを借りに母屋のほうに行くと、ささやかながら小さい棚に水抜き剤やオイルの添加剤などが置いてあったりするのも見かけます。
昔はあれだけ勧められたので、口車に乗って購入した人もかなりいたと思うのですが、いまは注入する必要がなくなってしまったのでしょうか? そしてそもそもが水抜き剤とはいったいなんだったのか? なんで燃料タンクに水が混入するのか? などを少し深掘りして話してみようと思います。
■水抜き剤とはなんだったのか?
いったい何かと問われると、「読んで字のごとく、燃料タンクの水を抜くためのケミカル剤」と、真正面で回答するのが正解なアイテムです。
その効能から説明していきましょう。水抜き剤は、水を分解しガソリンと結合する性質を持っている「IPA(イソプロピルアルコール)」というものが主成分の液体です。そのIPAがタンク内の水と結合し、ガソリンに溶け込みます。そしてそのままエンジンに送られていき、ガソリンとともに燃焼されます。燃焼されたあとの水分は水蒸気となって大気に解放されていきます。そうしてタンク内の水が除去されるというわけです。
ガソリンに溶け込んだとはいっても、水分とIPAは異物なので燃焼にとっては不純物なのですが、水のまま燃焼室に送られてしまうと、量によってはエンジンを壊してしまう原因になってしまうので、そのことを考えれば有効だと言えます。
■燃料タンクに水が混入するというのはなぜ?
大気中には水分が含まれています。冷たい飲み物が入ったグラスのまわりに結露するのがその証です。温度が高ければ気体の状態で空気に混じって漂っていますが、そのコップの例のように温度が下がると液化して水になります。
燃料タンクの内部の状態を想像してみます。満タンのときはほぼガソリンで満たされているので空気の量は少ないですが、ガソリンが減っていくと空気が流入して、空気が多い状態になっていきます。
流入した状態では気体の状態ですが、タンク内が空気で満たされたままで温度が急激に下がった場合、空気中の水分が結露して液体の水になってタンク内に留まります。温度が高くなればまた蒸発して気体になりますが、よほど高くならない限りは水の状態で留まってしまいます。
水はガソリンより比重が大きいため、タンクの底に溜まります。この状態では直接サビには繋がりませんが、ここに空気が触れて酸素が供給されてしまうとサビのきっかけとなり、それを長期間放置すると、金属製のガソリンタンクはよろしくない状態になってしまうのです。
昔の人が、「あまり乗らないクルマはタンクを満タンにしておけ」とアドバイスしていたのはそいういうことを防ぐためというのが理由でしょう。少しガソリンが残っていたはずなのにサビが発生していた、という話、昔はけっこうあったようです。
とくに旧いクルマの場合はガソリンタンクの防錆処理も未発達だったこともあって、タンクに穴が空いてしまうというトラブルもそれなりに多かったと聞きます。