確かに変更で売れた! けれどもデザイナーの意図は……
これこそ「変化のための変更」のお手本?
4台目は一気に現在に近づき、先代のトヨタ・アクアとします。定番となったプリウスの流れを汲むHV専用コンパクトハッチとして、2011年に登場したヒット作です。
特徴的な「トライアングル・シルエット」を踏襲したスタイルは、まさに3代目プリウスを思わせる安定感がキモでしたが、3年後のマイナーチェンジでは端正な台形グリルが不安定な六角形となり、さらに2年後にはフロントランプがじつに曖昧な形状に。
引き延ばしたランプや複雑なキャラクターラインなど、当時のトヨタ車は強引な特徴付けが目立ちましたが、まるでチーズの塊を溶かしたようにボヤけてしまったアクアの顔はまさにそれ。わずかな変更ではあっても、初期デザインの意図を無にするには十分なのです。
やっぱり売れなくちゃ意味がない?
最後はいよいよ現行車から、ダイハツのタントをピックアップします。ご存じのとおり、全高1700mmを超える「軽スーパーハイトワゴン」なるジャンルを確立した超ヒット作で、現行の4代目は2019年に登場しました。
初期型は、いまダイハツが提唱する「良品廉価」を反映し、親しみを前面に出したスタイリングが特徴でしたが、これがユーザーにウケず苦戦。3年後のマイナーチェンジでは、とりわけカスタムをオラオラ顔に戻すべく、フード、フェンダー、ランプ、バンパーに渡って大手術が行われたのです。
まあ、前期型も決して上品とは言えませんでしたが、それでもギラギラのメッキ顔ではないカスタムを模索していたことはわかります。しかし、これで販売はすっかり持ち直したのですから、デザイナーの意図とユーザーの期待のギャップはじつに大きいワケです。
さて、今回取り上げた5台は販売好転のため、あるいは変えること自体が目的のマイナーチェンジでした。何しろ商売ですからキレイごとは不要なのですが、それでもスタイリングが少なからず軽視されている点は残念なところですね。