この記事をまとめると
■クルマの速さを測る指標として「最高速」や「0-100km/h加速」が用いられる
■BEVは比較的容易に「0-100km/h加速」の速いタイムが出しやすいためメーカーもそこを強調する
■今後も高性能であることのひとつの指標として「航続距離」とともに使われていく
かつての性能指標は最高速だった
かつては「最高速」がクルマの速さを示すものさしだった。それを象徴するのがスーパーカーブームの頃のフェラーリ512BBと365GT4/BBと、ランボルギーニ・カウンタックのエピソードだ。真偽については諸説あるわけだが、302km/hと300km/hと、わずか2km/h差でフェラーリが上まわったとされている。
当時、欧米勢に性能面では大きく水をあけられていた日本勢は、まずチューニングの世界で最高速を競うようになった。谷田部の高速周回路で、300km/hを超えることに多くのチューナーが情熱を注いでいたのを思い出す。
やがて、技術や空力の進化により、1990年代には市販車でも航続距離で300km/hを超えるようになった。その後は、2005年登場のブガッティ・ヴェイロンが400km/hを超えたことはさすがに注目されたものの、これほどの速度域になると、計測できる場所も限られるという事情や、あるいは250km/hの速度リミッターが普及したことや、そもそも最高速でしのぎをけずるのは危険と認識されるようになったこともあってか、最高速はあまり話題とならなくなった。
もうひとつ、速さを示す指標として、早くから用いられていたのが、スタート地点から400m(海外では1/4マイル=約400mの場合も)までの所要タイムを示す「ゼロヨン」だ。筆者がクルマに興味を持ち始めた約50年前に、カタログに記載されているのを見た覚えがある。たしか初代セリカが16秒台だったと記憶している。
そのゼロヨンと似て非なるもので、最近とみに「0-100km/h加速」が動力性能の指標として使われるようになってきた。日本ではそうでもないが、昔から海外では普通にカタログに記載されていたが、それが日本でも最近やけに目につくようになったと感じられるのは、近年のBEVの台頭によるところが大きいように思える。
BEVは既存の内燃エンジンを積んだクルマではそれなりに高性能な部類でないと出せないようなタイムを、比較的容易に出すことができる。それをメーカーがアピールする機会が増えたことで、0-100km/h加速がかつてよりもメジャーになったといえそうだ。
どれぐらい速いかは数字を見れば一目瞭然で、ふだん乗るときに誰でも体感できる速さに直結しているのが、0-100km/h加速のよいところだ。それに0-100km/h加速というのは、単にエンジンやモーターの性能を高めれば速くなるというものではなく、その性能をいかに着実に路面に伝えられるかが問われる。スタートダッシュが大事だ。
タイムを短縮するためには出力だけでなくトラクション性能が高くなければならない。その意味では、クルマ自体のトータルな性能が求められることになり、それもふだん乗るときに体感できるものだ。0-100km/h加速はいろいろ理にかなっている。
一般的には、5秒を切っていればなかなか速い部類に入り、3秒を切れば相当に速い部類に入る。特殊なクルマを除いて3秒を切っている市販車というのは、ごくひとにぎりのスーパースポーツが大半となっている。