補助金のバラまきでEV普及を狙う……はいずれツケがまわってくる! そろそろ仕組みを再構築するべきだ (2/2ページ)

住む場所によって補助金額が倍以上も変わる!

 また、経済産業省の補助金は全国で実施されるが、自治体の交付額は前述のとおり地域によって異なる。すべての自治体が東京都のように多額の交付をするわけではない。川を一本隔てるだけで、補助金交付額が大きく変わるのだ。

 こうなるとEVの売れ行きは「補助金頼み」になる。補助金の有無によって、実質的な購入価格が55万円から130万円も変われば当然だ。「補助金の交付を受けられれば購入するし、そうでなければ買わない」と判断される。

 この点について、EVの販売店では以下のように説明した。

「お客様がEVを注文され、納車を待つ間に予算を使い切って補助金が終了すると困る。補助金の受け付けを再開してから申請すれば良いが、補助金申請書の提出期限は、原則として初度登録(軽自動車は初度届け出)から1カ月以内だ。そうなると補助金を受け取るには、受け付けを再開する直前まで登録できない。仕方なく登録しない状態で車両を預かり、補助金の受け付けが再開されてから登録と申請を行った」。

 このような具合だから、補助金が一切なくなると、EVの販売にも深刻な影響を与える。メーカーはEVのコストと価格の低減に力を入れ、国と自治体は、互いに連携して補助金の不公平を是正する必要がある。

 とくにいまのような補助金のバラ撒きは、一見するとEVの販売を促進するように思えるが、実際はそうならない。EVがクルマの魅力よりも「補助金ありき」で販売する商品になり、市場の関心も環境ではなく、損得勘定へ向かいかねない。補助金交付額が車両価格の10〜15%であれば販売促進に効果的だが、それを超えると弊害が著しくなる。補助金をすべて見直して再構築すべき時期にきている。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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